【メディア掲載】10月4日(日)読売新聞都民版(22,23面)―ホットぷれいす 東京 2015
こんにちは。田中です。
クラウドファンディングが終了し、早1週間以上が過ぎましたが、たくさんのご反響をいただき、いろいろな形で広がっています。
今回の記事掲載も、READYFOR?で、当方のクラウドファンディングプロジェクトを記者の方が見て下さり、取材にいらしてくださいました。
初めて、写真部の方が取材を担当される紙面への掲載で、実際の記事を拝見して写真のクオリティの高さに驚きました。
都民版での掲載のため、東京都外の方はご覧いただけない紙面なのですが、写真を掲載しますので、ぜひご一読いただければと思います。
記者の方が、とても丁寧に取材してくださり、
「外国にルーツを持つ子どもたちの課題は本当に複雑ですね。それをどう写真で表現するか・・・」とおっしゃっていたのが印象的でした。
ある状況を写真で表現する、それがメディアの写真を担当する方のお仕事なのか、と初めて気づいた次第です。できあがった紙面を拝見し、なるほど、と。
いろいろなニーズや課題、可能性を抱える外国にルーツを持つ子どもたち。
いろいろな側面から、いろいろな形で彼らのことを伝えていけたら、と思います。
「知らない」を「知らなかった」にする力
9月26日に終了した、READYFOR?のクラウドファンディング。
このプロジェクトには本当に、たくさんの方のご支援をいただき、目標金額189%達成もさることながら、ジャーナリスト、文筆家、芸術家、起業家など・・・、著名人の方に多くご支援いただいたことが、成功の一つの要因となったと感じています。
私は今年度に入ってから、自らの役割を「発信者」として位置づけてきましたが、やはりすでに一定の社会的ポジションを確立しておられる方々の発進力、発言力は比べ物にならないくらい圧倒的で、そこから発信される情報を目の当たりにして初めて、外国にルーツを持つ子どもの問題に気付いた、と言うお声をたくさんいただきました。
これまで私の情報をキャッチする方々の多くが、いわゆる「関係者」であり、外国にルーツを持つ子どもや若者、教育、日本語、多文化共生といったキーワードに反応できる人たちで、こうしたトピックに興味関心を持っていない方々へはほとんど伝わっていなかったのだろうと思います。
こうした「関心の無い層」に大して情報を「発信する」ことや、「伝える」ことの難しさ。それを実現してしまう、著名人のスゴさ・・・感動させられました!
やはりもっと、情報を伝えるということを勉強しなくてはならないな!と。そして今回のプロジェクトに携わって下さったインフルエンサーの方々が実現されているように、外国にルーツを持つ子どもたちの現状と課題について、1人でも多くの人たちの「知らない」を、「知らなかった(でも今は知っている)」に変えていけるよう、がんばります。
今回、特にジャーナリストで、市民メディア8bitnews主催の堀潤さんが問題意識を共有してくださり、様々な媒体で外国にルーツを持つ子どもたちの現状と課題、私たちの活動について発信してくださいました。(深謝)
まだご覧になっていない方、動画もあり、わかりやすい記事ですので、ぜひご覧ください。
【8bitnews】
【Yahoo!ニュース】
【ハフィントンポスト】
日本社会に不可欠な力を、大切に育てよう
【外国にルーツを持つ子どもが、専門家による日本語教育を受けられると・・・】
→地震や先日の鬼怒川の決壊による水害など、有事の際に日本語のわからない外国人の方々を助けることのできる「当事者リーダー、サポーター」としての活躍が期待できます。
被災地では外国人の方々が避難所で言葉がわからずに困ったり、疲弊しているというニュースが流れています。また、避難指示放送が日本語のみであったために、逃げ遅れたという外国人の方のお話しもありました。
(・・・報道では市の担当者も「そこまで手が回らない」とおっしゃっていたとのことでしたが、そもそも避難指示くらいなら外国語で録音しておいたものを流す、とうこともできそうです)
公的機関を含めた地域で外国にルーツを持つ方々が活躍できれば、こうした事態や日常的な「言葉の壁」を低くすることができますよね。そうすると、外国人の方自身だけでなく、対応に追われる日本人の方にとっても、負担軽減につながります。
<「災害」を含め、あらゆる生活の場面で>
今、シリア等からの難民の方々を取り巻く状況が切迫しています。
難民の申請から認定までに長い時間がかかり当事者の方々も、受け入れ側も疲弊している地域もあるそうです。難民の方々の絶対数が多い、ということのほかに、通訳が圧倒的に足りない状況が認定作業を遅らせている一因とのことでした。
たとえば今後、シリア難民の方の受け入れを進める時、アラビア語ー日本語のバイリンガルが少なくない人数、必要となります。
また、難民に限らず、移住希望者、就労希望者など多くの外国人の方々に門戸を開いていくのだとしたら、彼らの日本での生活を支える多言語人材を欠かすことはできません。
<「グローバル化」の潮を泳ぐために>
・・・20代前後で来日した留学生等とは異なり、子どもの頃から一定以上の期間を日本で過ごした外国にルーツを持つ子どもや若者は、日本の状況や”日本的感覚”をよく理解した上で、通訳やサポート、主体的な活動ができるというポテンシャルを持っています。
企業活動においても、海外との取引きや情報発信などの場面で「身内」にバイリンガル人材を抱えておくことのメリットは大きいでしょう。サービス業の顧客自身も多言語化してきていますから、ホテルやファーストフード、レストランなどで多言語対応ができれば新たな顧客層の開拓につながります。
今現在も、そして今後もグローバル化の潮流から逃れることができないのだとしたら、その流れの中で力強く泳ぐことのできる人材の育成は必要不可欠です。
ただ、それを実現するためには少なくとも「日本語教育」と「母語教育」(継承語教育を含む)の両輪を持ってバイリンガルを育てていこうとする積極的な関与がなくてはなりません。
日本の子どもたちや若者の海外経験や語学力を高めることも一つの手ですが、国内に居住する外国にルーツを持つ子どもたちの力を高めてゆくこともまた、一つの有効な手段であると考えています。
<「勝手なこと」ではあるけれど>
・・・こうした発言は、当事者の外国にルーツを持つ方々にとっては「勝手なことを言わないで」と言われそうですね。私も「女性活用」といわれると、勝手なこと言うな!と思います(苦笑)。
けれども、そういう方向性が国や都道府県レベルで打ち出されていくことで、外国にルーツを持つ子どもたちを取り巻く環境は整備され、改善していく可能性が高まります。
みなさんと、多様性を力に変えていけるような、豊かで新しい日本の社会を作っていけるように、私自身は小さいながらもできる限りの努力をしたいと思っています。
私たちが「専門的支援環境」にこだわる2つの理由
(毎週1回、土曜日に開かれるボランティアベースのクラス。ボランティアパワーに助けられ、毎回とてもにぎやかです)
<サポート機会の拡充は「居場所」の創出に>
現在、外国にルーツを持つ子どもの日本語教育や学習支援は、私たちのようなNPOが専門的に関わる場は数少なく、多くの場合、大学生や市民ボランティアが中心となり、子どもたちと1対1または少人数のグループによって実施されています。
また、最近では自治体ごとにこうした子どもたちの支援員を採用し、複数の学校をかけもってそこに在籍する児童生徒の学習をサポートしたり、学校内で「国際学級」や類似のクラスが設けられている場合があります(この場合、教員免許を持つ方が指導に入られるケースが多く、必ずしも日本語教育の専門家ではないことも)。
こうしたサポート機会が大小さまざまに増えることで、子どもたちがアクセスしやすくなること自体はとても重要で、日本社会に「居場所」を見出しづらい外国にルーツを持つ子どもたちにとって、学習以上に、心のよりどころ、同じ境遇の仲間と出会える場としての機能は、多くの子どもたちにとって貴重なものとなるはずです。
<土曜日は「学を楽しむ」ボランティアクラスを運営中>
私たちの現場でも、毎週土曜日にはサポートボランティアの方々が中心となって、子どもたちが「学ぶを楽しむ」というコンセプトの下、学校の課題や苦手な部分を1対1または少人数のグループでサポートするプログラムを運営しています。
勉強に飽きてしまったら、ボランティアのお兄さんやお姉さんとおしゃべりをしたり、ゲームをして遊んだりなど、比較的自由な時間をすごせる90分間を、ワンコインで提供しています。スクール内でもっとも安価なプログラムのため、平日の正規クラスには通えない経済状況のご家庭のお子さんたちも、こちらには毎週顔を出してくれています。
サポートボランティアの皆さんの中には、わざわざ都外から毎週サポートにいらしてくださる方もおられたり、元学校の先生としての知識と経験をフルに活用してサポートしてくださる方もおられたり、と、本当に心強く、ありがたく、頭が下がる思いです。
<質か量か・・・>
一方で、やはりボランティアの皆さんによるご協力の下に運営されているプログラムは、その日その日でサポートできる大人の人数や、顔ぶれにバラつきが出てしまいます。このため、どうしても学習内容の「継続性」や「積み上げ」といった要素は薄れてしまいがちです。また、インターネット上のグループウェアを利用し、情報共有に努めてはいるものの、子どもたち1人1人の特徴や学習の進度などを、ボランティアの方々全員にすみずみまで共有することは現実的ではないところです。
また、不登校や不就学状態の外国にルーツを持つ子どもたちも少なくない中、彼らが「毎日、学校代わりに通える場」があることの重要性も実感するところです。ボランティアベースでは、やはり週1回、週2回が限界だろうと思います。
私たちの現場が、文科省からの委託事業終了時にボランティアベースでの運営をメインにせず、コストがかかっても専門的な教育環境の維持に努めた理由の1つは、この支援の「継続性」と支援者間連携が外国にルーツを持つ子どもたちを支えるにあたって、なくてはならないものであると感じているからです。
<継続性と連携で生まれるメリットは・・・>
支援の「継続性」を持つことで、支援者の入れ替わりを最小限に留めることで、
・子どもたちとの信頼関係が築きやすくなること
・支援期間中だけでなく支援終了後も「○○先生に会いたい」という理由で子どもたちと「場」とのつながりを維持しやすくなること
・支援終了後に状況変化が起きた場合でも、すぐに再支援しやくすなること
などのメリットが生まれます。
また、1人の支援者がそれを「仕事」として携わることで、継続性に加え、経験の積み上げとスキルアップを図りやすくなり、支援の質を向上させることができますし、上述のとおり、何よりも学校につながっていない不登校等の子どもたちが、毎日通うことのできる場を開くことができることも、重要な要素だと考えています。
この現場には「日本語教育」の担当者と、数学や英語など、「教科学習」の担当者に加え、外国にルーツを持つ子どもの周辺環境に働きかけ、内外のリソースをコーディネートすることで支援を行う「多文化コーディネーター」の3役に分かれ、それぞれの領域で子どもたちをサポートしています。
ただ、それぞれの担当者が「日本語だけ」「数学だけ」とバラバラに支援をしていても、効果が小さく、たとえば数学の中の「日本語」が理解できない子どものつまずきを解消するためには、日本語教育領域の知識を応用する必要があります。
また、それまで順調に前進していたあるお子さんが、とつぜん現場に顔を出さなくなったとき、「現場にこないのなら支援できない」という「待ち」の姿勢ではなく、学習の場に再び足を運ぶことができるよう働きかけを行っています。
また、そのお子さんの状況を日本語や学習支援担当者と共有することで、カリキュラムの微調整を行ったりなど、内外で情報共有を含めて連携を図ることが、支援をいたずらに長引かせることなく、日本の社会で元気に生活し、友人たちと楽しく過ごせる、子どもらしい日々を守ることにつながると考えています。