NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/ 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援事業運営を担当。Yahoo!ニュース個人オーサー。2児の母。

2016年度下半期YSCグローバル・スクールスタッフ募集(日本語教師/コーディネーター/学習支援/ICT担当)

「日本社会への入り口」となる大人たち

私たちが支援している外国にルーツを持つ子ども達の中には、日本で生まれ育った子ども、小さな頃に来日した子ども、10代に入って新たに来日した子どもなど様々な子ども達がいます。そのルーツもフィリピンや中国、ペルー、ネパール、バングラデシュやロシア、アメリカなど・・・年間100人前後の多様な子ども達と出会い、彼らが日本の社会の中で元気に過ごしていけるようにサポートしています。

 

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 子ども達にとって私たち「支援者」は、時に日本社会への窓口であり、外国生活で唯一気を許すことのできる心の居場所であったりします。

 

日本語がわからない

学校で「自分の国に帰れ」といじめられる

勉強についていけない

家庭環境が複雑で不安を抱えている・・・


子ども達が安心して(一時的に)過ごせる場は、この日本社会の中であまり多くありませんが、彼らの大半(スクール内統計では97%)が、今後も日本社会の中で成長し、就職し、家庭を持って暮らしていくことになる「日本社会の一員」です。

私たち支援者はこうした子ども達が自信を持って、日本社会の新たな力となり活躍する事ができるよう、その基盤を作っていくのが重要な役割だと認識しています。

 

専門性を持った3つのポジションから包括的にアプローチ

 YSCグローバル・スクールは、全国にある外国にルーツを持つ子ども達の支援機関の中でも珍しい、専門的支援を行うプロジェクトで、

 

多文化コーディネーター

日本語教師(有資格者)

学習支援担当者

 

のそれぞれの専門性を持ったスタッフが、現場での日本語教育・学習支援に留まらず子ども達を取り巻く諸課題に対して連携し、包括的にアプローチを行っています。

 

また、彼らの学習面だけでなく自立を見据えたキャリア教育、就労支援を始めとして、今年度からは外国人散在地域に暮らす子ども達のためのICTを活用した遠隔地日本語教育支援事業の立ち上げなど、新たな領域にも積極的な挑戦を続けています。

(次年度には、発達に課題を有する子ども達の福祉的支援事業にも着手予定です)

 

こうしたベンチャー的な風土の中で、自らの専門性を生かして外国にルーツを持つ子ども達を支えたい・・・そんな気概のある方と、多様性が豊かさとなる未来を目指して共に歩んで行きたいと思っています。

 

新規事業担当者も含め、各職募集中!

 

今回は、ICT教育コーディネーターという新たなポジションも含めた採用を予定しています。いずれも、長期間の勤務ができる方を歓迎しています。

 

1)多文化コーディネーター(未経験可/契約社員

2)多文化ICT教育コーディネーター(未経験可)
3)日本語教師(有資格者、経験2年以上/契約社員orパートタイム)
4)日本語教師アシスタント(有資格者、未経験可)
5)学習支援担当(理科・数学担当/4年制大学生以上)
6)学習支援担当(英語・社会担当/4年制大学生以上)


勤務日時:月曜日~金曜日、午前9時~午後7時
*ポジションにより週2回~5回まで異なります

待遇:資格・経験等により1,000円~2,400円+交通費全額支給、保険完備

   契約社員は月給200,000円~

勤務地:NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部
    YSCグローバル・スクール
    東京都福生市本町117-1スプリングバレー福生201
   (JR青梅線福生駅下車、徒歩2分)

<各職求人詳細はこちらをご確認ください>

http://www.kodomo-nihongo.com/

 

<参考:YSCグローバル・スクールFacebookページ>

https://www.facebook.com/kodomo.nihongo/

 

<参考:YSCグローバル・スクール発行メールマガジン

グローバルキッズ&ユースマガジン

海外からでも使える!自宅学習に最適な子どもの日本語・継承語教育オススメ無料教材

海外に暮らす日本にルーツを持つ子ども達

海外に暮らす、日本人の子どもたちは外務省による「海外子女統計」によると、長期滞在の義務教育年齢の子どもだけで79,000人以上。10年前と比べ、2万人以上増加しています。

日本国籍を持たない、日本にルーツを持つ子ども達(両親のいずれかが日本人、日系人など)の存在なども合わせると、かなりの数に上るのではないかと見られます。

 

海外での生活が一時的であれば、いずれ帰国した際のことを念頭に、日本語の力を年齢相応に維持したり、学校の勉強についていけるように日本語で算数や国語、社会などの教科を学ぶ練習をするために、日本人学校や補習校に通わせたり、自宅で通信教材などを使って学習させることも多いのではないでしょうか。

 

また、原則として生活基盤が海外にある場合でも、一時帰国の際に祖父母などとのコミュニケーションが取れたり、将来の事を考えて、日本語を少しでも身につけて欲しいと考えている親御さんも少なくないのではないでしょうか。

 

一方で、帰国するつもりが当初はなく、積極的な日本語学習はさせてこなかったものの、離婚や日本の家族の病気など、様々な事情により日本での生活をすることになったケースや、これまで意識してこなかったけれど、子ども達の成長に伴って「やはり日本語を話せるようになって欲しい」と思い直すようなケースも。

 

自宅だけで日本語を教えるのは大変!

私たちのスクールでも、海外からの「一時帰国」の際に少しでも日本語をという親御さんの希望があり、短期間限定で、日本にルーツを持つ子ども達を受け入れることがあります。

 

こうした海外で生活をしている日本人の親御さんからよくうかがうのは・・・「自分で教えるのが難しい(時間もノウハウもない)」ということと「子ども自身が日本語学習へのモチベーションを持てない」というお悩みです。

 

確かに家庭の外は全て外国語、という海外の生活の中で、親御さんの努力だけで(モチベーションの持ちづらい)子どもの日本語の力を高めていく(あるいは維持していく)のは大変なことだと、その逆の生活を送っている、日本国内の海外にルーツを持つ子ども達の支援をしていて実感します。

 

そんな時に、インターネット上の無料教材の活用などをオススメしています。

 

「ひらがなプリント」と「学校で使う教科書」の狭間にある
子ども達が使いやすいオススメ教材3点

ひらがなのプリントや、低学年向けの簡単な学習教材などは検索するとたくさんヒットするのですが、この記事では・・・

 

1)年齢が高く「幼稚」に見える教材を使うことに抵抗がある

2)「難しい漢字や日本語の文章はわからないけれど、耳で聞けばなんとなく理解できる程度の日本語の力がある」ため、日本語を母語としない子どものための文法教材などはちょっと使いづらい

3)「日本への帰国などを念頭に、日本での教科の勉強をしたい/させたい」

 

場合などに適した無料教材をご紹介します。

 

<JYL Project 子どもの日本語ライブラリ>

www.kodomo-kotoba.info

こちらは外国にルーツを持つ子ども向けとなっていますが、小学生低学年向け/中学年向け/高学年向け/中学生向けと対象年齢ごとに、日本語や数学、理科など各教科に関する無料教材などが検索できる他、動画で専門的な指導方法を確認することができ、自宅で自らお子さんの学習をサポートするご家庭にとって、役に立つ内容がぎっしり詰まっています。

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(JYL Projectサイトでは、教材を使ってどのように支援したら良いのか、具体的なノウハウが動画で学べます)

 

NHK for School>

www.nhk.or.jp

 

自分が子どもの頃、NHK教育テレビの番組を学校で観たことがある方も多いかと思います。このサイトは、教育テレビで放送されている学校放送番組の動画を無料で視聴できるだけでなく、関連コンテンツ(クイズやオンラインで自習可能なワークなど)も豊富。

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(特に動画に関連した教材はビジュアルを中心にまとめられているので、難しい日本語がわからない場合も、理解しやすい作りになっています。)

 

特別支援教育のための教材>

特別支援教育のための教材というと、「ちょっと違うんじゃない?」と思われる方もおられるかもしれませんが、こちらのサイトでは、文字の理解が難しい子どものために、漢字のオリジナルプリント教材を作成できるデジタルコンテンツや、生活シュミレーションから数に関する力を育てるコンテンツなど・・・

 

集中力が続きづらかったり、言葉の理解に困難を抱える子ども達を対象に、ビジュアルをふんだんに使って作られている点が、日本語・継承語を学ぶ子ども達にもフィットしています。

とにかく「わかりやすく」「個別ニーズのかゆいところに手が届く」大量の教材がすべて無料で利用できる点で、活用しない手は無い!と言うくらいオススメのサイトです。

http://www.e-kokoro.ne.jp/ss/1/index.php

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海外にルーツを持つ子ども達にも、日本にルーツを持つ子ども達にも、楽しい学びを

日本に暮らす海外にルーツを持つ子ども達も、海外に暮らす日本にルーツを持つ子ども達にも、「学びたい」気持ちを育むこと。その気持ちを支えることができる教材や支援にアクセスできることが大切だなと感じています。

 

インターネット上には無料の使える教材やリソースがたくさん公開されています。使えるものはどんどん使って、子ども達の学びをサポートできるといいですね!

 

今、私たちのスクールでは、ITを活用して専門家による日本語教育を、ライブ配信する新しいプロジェクトに取り組んでいます。身近に日本語を教えてくれる人がいない日本に暮らす海外ルーツの子ども達だけでなく、海外に暮らしていて日本語・継承語学習を必要としている子ども達にも活用してもらえるのでは、と期待しています。

NICO|にほんご×子どもプロジェクト 詳細はこちらのリンクからどうぞ。

日本語で育つ子どもたちは、すべて日本の子どもであると言いたい

ウティナン君に想いを寄せて

 

山梨県に暮らす、タイにルーツを持つ、ウォン・ウティナン君のニュースをご存知でしょうか?

 

ウティナン君は日本生まれ・日本育ちですが、お母さんがビザが切れた状態で超過滞在だったため、在留資格のないまま各地を転々と隠れるように生活してきたそうです。

 

小学校に通うこともできず、山梨県が2011年に行った外国籍の子どもの不就学調査により発見され、その後、公立の中学校に編入しています。7年間の教育の空白期間があったにも関わらず、支援団体の支援を受けて学力を高め、高校進学も果たしています。

 

ウティナン君は、2013年に入国管理局に在留特別許可を申請しましたが、2014年に入管が言い渡したのは退去強制処分。その取り消しを求めていた訴訟で、東京地裁は6月30日に、ウティナン君側の請求を棄却する判決を出しました。

 

 

「日本で生まれたことが罪なのでしょうか?」

 

 

そのウティナン君が、昨年裁判官の方に宛てて書いた手紙の内容が、ふたたび話題になっています。

 

「・・・僕が生れたことは悪いことだったのでしょうか?僕は産んでくれたことを感謝しています。生んでもらって良かったし、友だちと楽しく、一生懸命生きていきたいと思っています。どうか僕のことを認めてほしいと思います。何も悪いことをしていないのに、なぜ罪があるように扱われるのでしょうか?僕が日本で生まれたことが罪なのでしょうか?僕は悔しいです。」

 

「・・・どうか在留を許可してください。僕たちを認めてください。僕はまだ子どもで力が足りません。やっと高校に入ったばかりで、これからますます勉強をしなければなりません。どうか力を貸してください。僕は、勉強を続け、立派な大人になって、真面目にしっかり働いて、僕のように困ってる人がいたら手助けできる人になりたいと思います。お願いします。」

 

(いずれも、2015年4月24日Huffington Post掲載記事より抜粋 「日本で生まれたことが罪なのでしょうか?」日本生まれ日本育ちのタイ人少年、在留許可を求める」 )

 

 

・・・現在、私たちの現場には在留資格を持たないお子さんは在籍していません。でも、ウティナン君のように日本で生まれ育ち、自分のルーツのある国に行ったこともなく、その国の言葉も文化もほとんどわからないという子どもは少なくありません。

 

「自分は外国人である」と考える子どもたちもいれば、「自分は見た目こそ違えど、日本人である」と考える子どもたちもいます。まだ自らのアイデンティティに悩んでいる子どもたちもいます。

 

でもこうした子どもたちの多くが、将来日本以外の国で暮らす、というイメージは持っていません。日本の中で高校に進学し、大学や専門学校などへ行き、就職をして、恋をして、結婚をして、子どもを育てて、親孝行をして・・・。

そんな将来像を描いています。

 

子どもたちと私たち(あるいは、私たちの子ども)とは、何か、違いがあるでしょうか?

 

 

日本人とはだれなんでしょうか

 

 

私自身も海外にルーツを持っていますが、「紙一重」の事柄が重なって、日本国籍の日本人として生まれました。その事実を知ったのは中学生になってからで、それまでは疑いようもなく、自分は「日本人」と言い切れましたが、それ以来は日本人とはだれなのかということをよく考えるようになりました。

 

その作業は、時にとても苦痛でしたが、ある時にふとこの苦痛の源泉は「日本人=単一民族」だと思い込んでいる、そういう価値観をどこからともなく刷り込まれている事なのだと考えるようになってから、気持ちが楽になったことを思い出しました。

 

今、「日本人」を定義するときに「血の純粋さ」が大切だというようなことを心の底から信じている人はどのくらいいるでしょうか?

 

先日、台湾にルーツを持つ作家、温又柔さんとお話をしたときに、温さんが冒頭から「そんなこと言ったら遣唐使の時代までさかのぼらなきゃ!」と満面の笑みでおっしゃっていました。

 

私たち日本と呼ばれる国に住んでいる人々の多様性は、昔々から存在していて、すでにいろいろなルーツを持っている人々の集合体が混ざり合って成立しているのが日本人なんだと、外国にルーツを持つ子どもたちの支援をしている今現在は、より強く感じています。

 

国家、と呼ばれる単位の枠組み自体が揺らいでいて、あちこちでそのひずみが明白になっている現在においては、もはや国籍で人を定義することや移動を制限すること自体に無理があるのかもしれません。

 

 

今、もし「帰りなさい」と言われたら・・・

 

 

先ほど、私は「紙一重」で日本国籍を持っている、と書きました。そんな立場もあって、ウティナン君のニュースを初めて耳にした時から、ある嫌な想像をするようになりました。

 

たとえばこの紙一重で持っている日本国籍が、ある日突然役に立たなくなって、「実の親または祖父母に外国出身者が含まれている者は日本人ではない」

みたいなルールの変更が突然起こったとしたら・・・

 

入管なりなんなりが私のところにやってきて、「あなたは外国出身者の子どもなので、そちらの国に帰ってください」と言われたら・・・そんなことは起こり得ないと思いながらも、でもそうなったらどうしよう?と考えを巡らせては、恐怖に身震いしたりします。

 

 

母なる国、日本に暮らす子どもたち

 

 

・・・多感な年齢でそんな事態に直面しなくてはならないウティナン君。同じように日本という国で生まれ、日本語で日本社会に育つ外国籍や無国籍の子どもたち。

 

その子どもたちの「母なる国」、日本。

 

少なくとも、言葉と社会を共有するこうした子どもたちを、私は、日本の子どもとしてとらえています。

 

日本で生まれ、日本語で育つ子どもは、すべて日本の子どもとして守り、育てる・・・その程度には人道的な国の「国民」でありたいと願っています。

 

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この記事は、Readyforにてクラウドファンディング中のプロジェクト「日本語がしゃべれず、ひとりぼっちの子どもにオンライン授業を!」新着情報記事から転載しています。

2016年参院選各党マニフェストに見る外国人・移民関連政策

参院選2016はこんな視点での比較も

東海地方に拠点を置く、多文化共生NPOの中間支援組織、NPO法人多文化共生リソースセンター東海さんが、7月10日に行われる参議院選挙に関連し、各政党が「移民」や「外国人」についてどう考えているのか、政策集の比較をしてくださったのでご紹介します。

 

多文化共生リソースセンター東海さんのブログエントリーより抜粋

「移民」「外国人」についての記載あり(*五十音順)


幸福実現党
移民受け入れに向けた制度設計を行います。(p.35)
・ 総枠での受け入れ数を定めるとともに、国籍別の受け入れ枠を設けることで、特定国への偏重や反日国からの移民を制限します。
・国籍取得時には日本国への忠誠を条件とするなど、日本国民としての自覚・誇りを持つよう促します。
政治や経済、文化など各分野で、世界を牽引し得る新たな日本モデルをつくり、さらなる発展を目指します。 (p.47)
少子化対策と併せて移民政策を進め、当面は人口1億5千万人を目標とし、将来的には3億人国家を目指します。

公明党
7 教育の充実と学校環境の整備促進 (p.11)
・学生がグローバルな環境で学べるよう、海外留学への経済的支援の拡充、大学の国際化への支援、留学生の受け入れ増加や留学生との交流を強力に推進します。
9 人権、性的マイノリティーの支援 (p.12)
急増する難民申請者問題に対応するため難民認定制度を適正化するとともに、認定難民及び人道的配慮等で保護された外国人への日本語支援等、公的支援を強 化します。
ヘイトスピーチなど、本邦の域外にある国または地 域の出身であることを理由として行われる不当な差別的言動を解消するため、人権教育及び人権啓発等の取り組みを強化します。

社会民主党
人権 (p.6)
・差別や敵意を煽る「ヘイトスピーチ」の根絶に向けて全力で取り組みます。

自由民主党
2020年東京オリンピックパラリンピック (p.18)
・2020年東京大会及び地方の観光地における外国人への対応に向けて、「言葉の壁」をなくす多言語音声翻訳の普及を図ります。
雇用と所得の拡大 (p.23)
労働力人口が減少し、現行制度でも外国人労働者の大幅な増加が見込まれる中で、日本人だけでは労働力が不足し社会に深刻な悪影響が生じる分野について、外国人労働者が適切に働ける制度を整備します。

新党改革
ヘイトスピーチ (p.14)
・特定の人種や民族を標的に差別をあおるヘイ トスピーチの解消のための対策法が6月3日に施行されました。
本邦外出身者の方々を侮辱し、日本で安心して生活することを阻むような言動を、社会として許してはいけません。罰則規定をどのように定めるかの議論を続けるとともに、ヘイ トスピーチに対する社会としての毅然とした態度を示していく必要があります。
海外留学の倍増、外国人留学生の受け入れ促進 (p.17)
・日本の若者の海外留学熱は一時に比べ大きく下がっています。2004 年に 8.3 万人だった日本人留学生の数は、2013 年には 6 万人に減っています。他方、海外に在留する邦人が年々増加の一途をたどっているように、世界との距離が近くなり、日本一国だけでは物事を考えられなくなっている時代に入っています。
・この社会の大きな流れに乗り遅れないため、日本の若者の海外留学生を倍増させるとともに、優秀な外国人留学生の受け入れを増やし、日本を内向きから外向きの国家に変えていくきっかけとします。
・海外の若者や他の方々が、インターネットで日本語の語学力を身につけてもらえるように、「サイバー N1(エヌワン)教育」なども検討していきます。

日本共産党
言論・表現の自由を守ります。ヘ イトスピーチを根絶します (p.15)
・民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶し ます。超党派で成立させた「ヘイトスピーチ解消法」も活用して、政府が断固たる立場にたつことを求めます。
*ホームページに「48 ヘイトスピーチ」「49 在日外国人」について詳細記載あり

日本のこころを大切にする党
我が党は、日本各地で、国際文化交流の祭典を催し、日本が、世界の文化が輝き、溢れ、交流する場となることを目指す。
・日本各地で、国際文化交流の祭典を催し、地方創生に資する。
・文化による国際貢献、「世界の文化が輝き溢れ、交流する場」の実現

民進党
国民の自由と 人権を守る (p.19)
・多様な価値観と少数者の人権を尊重する社会をつくります。
・ヘイト・スピーチ対策法を発展させ、人種、民族、出身などを理由とした差別を禁止する法律をつくりま す。


特に記載見つからず(*五十音順)
◆おおさか維新の会
国民怒りの声
生活の党と山本太郎となかまたち
◆日本を元気にする会
 

 

<上記抜粋の元記事「参院選2016」はこちら>

http://blog.canpan.info/mrc-t/archive/425#BlogEntryExtend

 

元記事の方には、各政党名のところにリンクが貼られていて、政策集にジャンプすることができます。 

まとめ作業大変だったろうと思いますが、とても参考になりますね。感謝。

 

このエントリーの転載を、多文化共生リソースセンター東海の代表理事である土井佳彦さんにお願いしたところ、ご快諾いただきました。重ねて感謝。

 

すぐに解決!だけが手段じゃない

 

私は個人的には、投票行動前の政治参加に関連するアクセシビリティを高めたほうが良いと思っていて、そういう意味で、政策集なども「やさしい日本語訳」などがあると、子どもの有権者教育にもなるし、日本語を母語としない有権者や識字の力が十分でない方々への情報提供機会を広げることにもなるかな、と思っています。

 

たとえば、今回私がざっと見た限りでは、公明党だけが、(おそらく)子ども向けのマニフェストを別に作成していて、文字も大きく、やさしい日本語の表現で、ルビも振ってあってわかりやすいんです。

www.komei.or.jp

(だからと言って、公明党を推したり、その他の政党を批判しているわけではありません)

 

こういう方向性で、身近にできることからすぐに取り組めたらいいなーという話しを土井さんにしたときに、彼が言ったのは

「翻訳とかってゆー“手段”の前に、有権者には日本語が読めない人や読みづらい人(ディスクレシア等)もいるんだってことの認識が大事ですよね。数を問題にせず、民主主義の中で権利が守られてない人の存在を世に問いたい」

(土井さんとのメッセージのやり取りから抜粋)

 という事でした。

 

彼のスタンスは、

「たしかにソリューション大事なんですが、この手の話題の場合、ソリューションの是非・可否に注目されるのはヤなんですよね。そこじゃないだろ、って思っちゃう。むしろ、課題を共有・共感してもらって、じゃあどーしたらいーの?ってのは各自に考えてほしい」

(同上)

というもので、すぐになんでもかんでも(?)解決したがる私とは異なり、じっくり民主主義を育てていきたいんだな、という想いが伝わってきました。

 

どの候補や政党を選ぶか、ということに目が行きがちですが、どのような選挙にするのか、を考えることも、私たち主権者の重要な役割で、特に権利を行使できない状況にある方々、権利自体を有さない外国籍の方々、子どもたちなど、彼らの存在を票を投じることができる有権者のひとりとしてどのように、自らの一票に託していくか。

 

そんなことも、長期・短期のいずれの視点でも考えていきたいな、と思っています。

 

「みんなにやさしい選挙」について、みなさんと考えるきっかけになれば、と、Yahooニュースで記事を公開しました。よろしければ、こちらもぜひ。

bylines.news.yahoo.co.jp

オランダに移住なさったご家族のブログを拝読して―日本語を母語としない子どもの支援者より、「子どもは小さいうちから海外に出るのはちょっと考えたほうがいい理由」

オランダ移住は単純にうらやましいです

広告代理店をおやめになり、オランダへ移住なさった吉田和充さんという方のブログを、転載先のライフハッカー経由で拝読しました。


タイトルは『オランダ移住から2カ月。我が子の順応性を見て気づいた「子どもは小さいうちから海外に出たほうがいい理由」』。

www.lifehacker.jp

 

まず初めに、私は吉田さんという方と面識もなければ、オランダへの移住を非難するつもりもなく(逆にうらやましい)、また、こうして吉田さんという方が書かれたブログを通して、子どもの言語発達について、私を含めて多くの方が考える機会を得られたことに感謝をしていることを、あらかじめお断りしておきます。

 

そのうえで、吉田さんがブログで書かれていた内容について、日本という海外に外国からやってきて、小さいうちから住んでいる日本語を母語としない子どもたちの現状を目の当たりにする支援者として、どうしても言及しておかなくては、と感じる事があり、この記事を発信することにしました。

 

決して何かを否定するものではなく、吉田さんがブログで発信してくださったエッセンスを軸に、現場での経験を踏まえて気を付けておきたいことをお伝えできたらな、と思います。

 

 日本語を母語としない子どもたちの支援者として、ココが気になる

 

まず、吉田さんのブログ記事の内容を確認しながら、私個人が「日本語を母語としない子どもたちの支援者」として気になるポイントを拾ってみます。

1)吉田さんは2カ月前にオランダへ移住なさった

  →うらやましいです。

 

2)6歳と2歳のお子さんと共に暮らしている

  →うちも子どもが4歳差で親近感。

 

3)上のお子さんは、オランダ語を学ぶ語学学校の小学校に通っている。

  →オランダ語を学ぶ語学学校の小学校、とは、ESLのDutch版のようなものでしょうか。さすがオランダ。移民向けの教育環境が整備されていますね。

 

4)上のお子さんは、すでに吉田家で一番のオランダ語の使い手となり、通訳をしてくれることもある

  →初期的には、上のお子さんにとってこの事実(自分が家族の中でオランダ語が一番できる)は自信となるでしょう。(ポイント1)

 

5)子どもの順応性は驚くほど高く、小さければ小さいほど海外は「楽」である

  →これはお子さん自身の性格や特性などに左右されそうですし、小さければ小さいほど、海外移住の際に気を付けなくてはならないことも(ポイント2)

 

6)下のお子さんは、日本語と英語とオランダ語が完全に混ざった状態で、吉田さんはこの点は問題だと考えておられる

  →吉田さんの下のお子さんの状況への問題意識はその通りです。(ポイント3) 

 

ということで、ポイントを3つ、拾い上げることができました。

これ以降は、話題提供してくださった吉田さんのブログに感謝しつつ、脇に置いて、単純にポイントごとに気を付けたいことをご紹介します。

 

 子どもが小さいと、それなりの「リスク」

 

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<ポイント1>「家族の通訳」を子どもが担うことのリスク

私が出会う現場の子どもたちの中にも、親御さんが10年、20年と日本で暮らしていながら、日本語がなかなか上達せず、次第に公立の学校で学ぶ子どもの方が日本語がよくできるようになったので、生活の多くの場面で「子どもの日本語力を親がアテにする」という状況が見られます。

 

そのことは、子どもにとって「家族の役に立っている」という自信をもたらすかもしれません。しかし、次のような状況ではどうでしょうか。

 

・保護者が病院へかかるため、通訳が必要になり子どもが学校を休んで親の病人につきそう

・子どもの学校に保護者が呼び出され、先生が子どもにとって都合の悪いことを話さなくてはならないときに、それを子ども自身が通訳する

 

前者は病院にとどまらず、役所での手続きなどの場面でも、子どもが学校を休んで保護者に同行することがあり、場合によってはかなりの欠席日数となることも。また、後者は先生が100しゃべっているうちの10しか子どもが通訳しない、都合の悪いことは親に伝えない(その逆も)などが起こる可能性があります。

 

子ども自身も、「何年も日本に暮らしているのに、ちっとも日本語ができない親」の存在を負担に感じ、親を尊敬できないなどの影響が出ることがあります。

 

欧米など、移民受け入れ態勢が整っている地域では、公的な通訳配置が進んでいてこのような状況にはならない可能性もありますが、やはり保護者自身が身の回りのこと、子どもの教育にかかわることなど、ある程度自立的にコミュニケーションが可能な語学力を身に着けておく、そのための機会が社会から提供されるに越したことはありません。

 

<ポイント2>子どもが小さければ小さいほど、「海外」で生活することのリスク

私たちの現場にやってくる子どもたちのうち、子ども自身の心身の発達に困難を抱えるケースは、小さなうちに来日したお子さん、日本生まれ・日本育ちのお子さんにほどよく見られます。

 

10代に入って、思春期を日本で過ごすことで発生するリスクももちろんあるのですが、ティーンエイジャーでの来日とそれ以前との来日では、リスクの種類が異なります。そして後者のリスクの方が、そのお子さんの「全人的な発達」に影響を及ぼす可能性が高く、注意が必要だと考えています。

 

ポイントは「母語が確立されているかどうか」です。

 

母語も日本語も中途半端となってしまったダブルリミテッドのお子さんや、母語は完全に失ってしまい、日本語が唯一の言語にも関わらず日本語自体が小学校低学年程度までで伸び悩んでしまうシングルリミテッドのお子さんの事例については、私個人のブログや講演などでもたびたびお伝えしてきました。

 

自宅から一歩外に出れば、圧倒的な外国語(日本語)社会の中で、家庭の中だけで母語を維持することは、親御さんのよほどの覚悟と時間が必要です。子どもが普段目にすることのない文字を習得させ、語彙を覚えさせ、年齢相応のコミュニケーションができるよう、手をかけ続けなければなりません。

 

そして小さければ小さいほど、長期にわたって、より多くの努力を子どもの母語学習に注がなくてはなりません。さらに、その努力をしないことで子どもに及ぶリスクは、幼少期であればあるほど、大きいことを実感しています。

 

<ポイント3>幼い子どもの言葉が「ちゃんぽん」になってしまうリスク

ポイント2に共通しますが、やはり小さければ小さいほど、母語とそうでない言語の使い分けは難しく、また、社会の中でより多く接する言語が母語でなかった場合に、母語を失うリスクは高まります。

 

これを自然に任せておいても、会話をするうえで、一定の期間が経過した後にお子さんが自然と母語母語でない言語の使い分けができるようになる場合もありますが、お子さんによってまたは家庭内での言語状況によっては、母語の力が弱まり、「聞けばわかるけど話せない」「会話はできるけど読み書きできない」などの状況に陥ることがあります。

 

小さなお子さんが、日本語、英語、母語とまぜこぜで話す様子が見られたら、まずは家庭の中で、母語の発達を促進できるような取り組みを徹底してください。親御さん自身が言葉を「ちゃんぽん」することは、おすすめしません。

 

「国を移動すること」を選択する余裕があるのであれば、少し立ち止まってほしい

 

小さいうちは、親子間で交わされる言葉も簡単で、語彙(単語)の数もそれほど多くはありません。このため、日本に暮らす外国人保護者も、子どもが日本語が上手になるように、と思い(あるいは周囲にそう”すすめられ”)家庭の中で日本語を使うことがあります。

 

そしてその親が子どもを思う気持ちが、子どもの母語の発達を不十分なものに留めてしまった上、保護者自信が日本語の読み書きが十分にはできないレベルの日本語の力しかない場合は、子どもが成長し、学校に入学した後に

 

・子どもの宿題を見てあげることができない

・学校から出された「おたより」が読めない

・面談時に先生の言っていることがわからない

母語がほとんどわからない子どもと、日本語で深い会話をすることができない

 

など、お子さんの年齢が上がれば上がるほど、困難の度合いが高まりますし、親子間のコミュニケーションにも大きな支障をきたします。

 

このように、日本という海外で子育てをする家庭が、子どもの言語発達や教育に関する領域で困難に直面するケースを数多く見てきました。

 

でも彼らが「子どもと共に日本で生活する」こと自体は非難すべきことではありません。途上国で仕事がなく、生活が成り立たないことをはじめとして様々な理由で日本へ来ることを選択し、すでに日本社会の一員としてともに子育てをする仲間として、サポートできることは民間の私たちのような活動を含めて、社会全体ですべきだと考えています。

 

一方でもし、冒頭の吉田さんのように、(おそらく)生活に余裕があり、今すぐに移住しなくても生きていける、という状況であれば、海外移住を選択する前にぜひ、お子さんの母語の発達について、家庭の中でどのように支えることができるのか、移住先で母語支援を受けられるのかどうか、など、情報と知識を入手し重要な検討項目の一つに組み込んでいただけたらと思います。

 

そしてもし、移住先の国で母語の発達を支えきれそうになければ、お子さんがある程度母語を確立できるといわれている10歳前後になるまでは、移住を遅らせることも、可能性の一つとして頭の片隅に入れておいていただけたらと思います。

 

長くなりましたが、以上、日本で、日本語を母語としない子どもたちを400名以上サポートしてきた私が考える、「子どもは小さいうちから海外に出るのはちょっと考えたほうがいい理由」でした。