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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

外国にルーツを持つ子どもに対する「学習支援”外”支援」

 

 

 

<異変・・・>

 

その子どもたちは小学生のきょうだいで、両親は同国出身者同士。主に父親が建設現場で朝から遅くまで働き、母親は子どもたちの面倒を見ていましたが子どもたち自身は、不就学期間が長く続き、私たちの現場につながった際にも、不安定な状況でした。

 

支援をはじめてしばらくたった初夏の頃、現場で出会う子どもたちからは笑顔が消えてゆき、それまでお弁当を持参してきていた昼食も数個のおにぎりを兄妹で分け合って食べる、空腹で現場で出されたスイカを皮まで食べようとすると言った”異変”に気づきました。

 

繰り返し確認を行うと、その子らの母親が急にこの兄妹と父親を残して帰国していたことがわかりました。父親は仕事のため子どもたちが起きる前に家を出て、夜は遅いという生活でしたので、その兄妹の一番上の子が、弟や妹の面倒をみながら家事をする、という生活だったのです。

 

 

<アパートへ安否確認を兼ねて食事を差し入れに>

 

父親との連絡もなかなか取れず(本当に多忙を極めた就労状況だったようですが・・・)、その是非に悩みつつも不安で、安否確認を兼ねての訪問時に、個人的に食料を差し入れるような日々が続きました。

 

そうして訪れるたびに彼らのアパートの一室は窓を閉め切られていました。真夏の暑い日には、エアコンのない小さなアパートで兄妹が扇風機のみで暑さに耐えながら過ごしていて、食料を持って訪れると、真っ先に「今日はなにー??」と嬉しそうに口をひらく。そんな状況が続きました。

 

一番上の子でも当時まだ小学校中学年。小さな体でせいいっぱいの家事と“子育て”をこなしていたはずですが、もちろん行き届くはずもなく、室内が荒れ、部屋には大量のアリや蚊が入り込んでいると言った状況で、学校側の主導で児童相談所での一時保護が検討されたり、見守りの体制の構築などが行われました。

 

 

<お母さん、帰ってきた!>

 

その後、ようやく涼しさが戻った頃、母親は無事に日本に戻り、兄妹にとっては心休まる時間もできてきて、ある程度落ち着いた段階で支援が終了となりました。
暑い夏の日に、強く心に残った支援ケースでした。

 

学校の先生からは時折、兄妹が元気に学校で過ごせているとのご連絡をいただいています。福祉ワーカーさんや警察の見守りなど、地域内でのサポート体制も母親が一時帰国した頃から整えられてきたこともあり、ひとまず安心、と言える状況です(こういう酷暑の日には、どうか涼しい場所で元気にしていますようにと願いますが・・・)。

 

 

<支援の第1段階は終了・・・でも本当は・・・>

 

一方で、彼らの支援は、親御さんのお子さんの教育に対する理解(不就学→就学→登校の継続)や学校側のこの家族に対する理解が深まり、不就学状態の長かった彼らが、ある程度家庭が落ち着き、「元気に通学できるようになった」時点で終了となりました。

 

本来であれば、その先の「学校の勉強についていけるような日本語の力や、学力を身につけることができた」というところまでは関与すべきケースでありましたが、今年の2月に文科省からの委託事業が終了した関係で、それまで委託費で運行していたスクールバスが廃止となり、小さな兄妹は交通費を負担しバスを乗り継いで隣の市にある当スクールまで通い続けることはできませんでした。

 

悔やまれるケースの一つでもあり、いつか無償枠を使って学習支援を再開したいと切に願うケースでもあります。

 

 

<外国にルーツを持つ子どもに対する「学習支援”外”支援」の重要性>

 

外国にルーツを持つ子どもたちの多くが、複雑な家庭状況(養父となる日本人男性との暮らしや親御さんの夜間就労による不在、実両親との「再統合」の課題など)や経済的困難な状況に置かれています。さらに学校生活においても言葉・文化の壁に加えていじめや非行などの課題を抱えやすく、こうした子どもたちへの支援は、ただの「日本語の習得」や「基礎学力の向上」など教育的マターへの対応だけに留めておくことができません。

 

当スクールでは「多文化コーディネーター」と呼ばれる専門のスタッフが、こうした外国にルーツを持つ子どもたちの置かれた周辺環境へ働きかけを行い、子どもたちに絡みついた複雑な環境・状況・困難の糸を1つ1つ解きほぐしています。

 

また、その過程において外国人保護者はもちろんのこと、教育委員会や生徒在籍(就学予定)学校の先生方、子ども家庭支援センターやソーシャルワーカー、地域ボランティアの方々など、多くの関係者との協働が必須となるため、こうしたネットワークを形成し、関係者との良好な関係を維持しながら、子ども1人1人のニーズに応じた支援活動を行っています。

 

 

<多文化コーディネーター、という専門人材はなぜ必要なのか>

 

外国にルーツを持つ子どもの家庭の場合、現存する支援機関や支援員が外国人保護者との日本語でのコミュニケーションが取れずに支援が行き詰ってしまったり、特有の困難などへの知識不足で関係が途切れてしまう場合などが少なくありませんが、専門的な人材が仲介に入ったり、コーディネートすることでスムーズに支援が始められることもしばしばです。

 

こうした点で、学習支援以上の包括的な取り組みを行う当スクールは、地域の中の外国にルーツを持つ子どもの支援の核としても行政や学校関係者などから評価を得ています。

 

他地域へのスケールアウトやスクールバスの再導入による支援範囲の拡大も、今後迅速に取り組んでいきたいと思っています。

 

 

*プライバシー保護のため、一部脚色しています。

*写真は本文と関係ありません。