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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

外国人失業率10%、外国籍母子家庭失業率はさらに高く・・・

子どもの貧困

<姿の「見えづらい」外国につながる子どもとその家庭>

 

世間には様々な統計調査があり、子育てや教育に関わる数値データもインターネット上で比較的容易にアクセスすることができるようになりました。

 

しかし、外国につながる子ども達の実態をその数多あるデータから見出すことは難しく、法務省文部科学省等による調査から見出される「外国籍児童生徒」という括りや「日本語指導を必要とする児童生徒」、という枠組みだけでは、日本国籍を有する外国につながる子どもや、不就学の子ども、正規の滞在資格を持たない子どもなど、多くの子どもたちがこぼれおちてしまいなかなかその実態をつかむことができません。

 

その「見えづらい」子ども達やその家族の姿を見出すことのできるデータの必要性は多くの関係者からも上がっていましたが、2011年に初めて国勢調査オーダーメード集計を利用した、文献が岡山大学大学院の先生方らによって公表され、以来、2000年版、2005年版、2010年版と貴重な数値をご提供くださっています。

(2010年国勢調査にみる在日外国人女性の結婚と仕事・住居 http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/metadata/53303 (岡山大学大学院文化科学研究科、大曲ら)  など)

 

この国勢調査オーダーメード集計は一般人には利用することができないため、上述のシリーズに掲載されている数値を利用し、外国につながる子どもとその家族のおかれた状況をあれこれ考えてたりしています。(国勢調査であってもすべての実態が把握できるわけではないことはもちろんですが・・・)


 

<外国人世帯の失業率は10%前後>

 

その中から、2010年度国勢調査に基づく外国籍の方々の国籍別失業率のデータをご紹介します。

 

 

2010年度国勢調査によると、日本の完全失業者が労働力人口に占める失業者比率が6.5%であるのに対し、韓国・朝鮮籍11.3%、中国籍6.5%、フィリピン国籍9%、タイ国籍9.6%、ブラジル国籍9.7%、ペルー国籍11.2%に上っています。特に、子育て世代と言える20代後半~50代の失業率は10%前後に上る国籍もあり、経済的に厳しい状況に置かれている点は、現場から見えてくる実態に即しています。

 

昨年度まで無償で支援を実施していた際に受け入れした児童生徒約400名の家庭では、低所得、生活困窮世帯率は30%を超えていました。

 

失業中あるいは失業と就業を繰り返している外国人保護者も少なからずおり、経済的に不安定な状況下では、特に「医療」へのアクセスや「レジャー(余暇)」活動が制限されている様子を目の当たりにしました。

 

「夏休み、どこいったの?」

 

という言葉は、こうした子どもを多く抱えている現場では、注意しなくてはならない問いかけです。彼らにとっては私たちが想像しているよりもずっと、地域を「移動する」ことのハードルが高いのです。

 

 

<さらに高まる外国人母子世帯の失業率

 

母親が外国籍である母子家庭に限ってみると、日本国籍のシングルマザー失業率が7.8%であるのに対し、韓国・朝鮮籍14%、中国籍18.3%、フィリピン国籍13.3%、タイ国籍14.8%、ブラジル、ペルーはそれぞれ13.5%、10.3%とより深刻な経済状況にあることがわかります。

 

 

母親がフィリピン出身者の母子世帯では生活保護受給者のうち79%が母子世帯であり、その他の国籍と比べても割合が高いことがわかります。

 

現場ではフィリピンやタイにルーツを持つ子どもたちのひとり親家庭率が高く、お母さんたちの中には若いころに来日した女性が多く、日本人男性との国際結婚→離婚、というパターンが大半を占めることと、現在の経済状況とは相関するのではないかと考えています。

 

尚、日本人男性との国際結婚経験を持つ方々は、そのお子さんが日本人男性との間に生まれた日本国籍を持つ、いわゆる「ハーフ」のお子さんであることも少なくありません。

 

こうした子どもたちを、外国人のお母さんたちが1人で、けんめいに働きながら育てていて、言葉もままならない国での子育ての大変さを思うと、本当に頭が下がります。

 

 

<今年の現場では・・・>

 

以前からお伝えしてきた通り、私達の現場は2015年2月にそれまで受託していた文部科学省定住外国人の子どもの就学支援事業(通称:虹の架け橋教室事業)が終了し、それまで無料だった各支援プログラムの完全有料化に踏み切らざるを得ませんでした。

 

このため、少なくない数の子ども達が実質、支援を継続して受けることができなくなってしまいました。特に、約30%含まれていた外国につながる低所得・生活困窮世帯の子ども達は、家庭の経済的な事由および支援サービスの縮小が原因で、支援半ばで中断せざるを得なかった、非常に残念なケースも発生しました。

 

これまで、可能な限り専門家による、外国につながる子どもに特化した適切な日本語教育や学習支援プログラムの質を落とさずに、持続的な運営ができるよう努めてきましたが、依然、経済的な理由から支援へのアクセスを断たれている子ども達が多数存在しています。


外国につながる子ども達は新たに来日し、日本語がまったくできない状況でも、日本で生まれ育ったり、幼少期に来日し日本語の日常会話にはまったく困らない場合でも、家庭や学校等での支援やサポートの有無、その質や量により困難を抱えやすい存在です。

 

一方で、外国につながるご家庭の日本への定住・永住志向の高まりは数々の現場や研究からも指摘され始めています。私たちの現場でも、それは同様です。つまり、外国にルーツを持つ子ども達の多くが、日本社会に留まり、教育を受け、社会へ巣立ち、あらたな家族を再び築こうとする、日本社会の子どもと言えるのです。

 

こうした子ども達が外国人保護者の不安定な就労による厳しい経済状況の下に暮らし、かつ適切な支援や教育へのアクセスを欠いたまま成長することによって生まれる影響は、本人はもちろんのこと、日本社会にとってもマイナスとなるものです。

 

しかし一方で、彼らは適切な環境や支援があれば2言語以上を操り、また複文化を理解する国際人としてのポテンシャルを高く持つ日本社会の宝となる可能性を多分に持っています。