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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

日本人の2倍!?外国にルーツを持つ子ども貧困率

子どもの貧困 いじめ・アイデンティティ・不登校

 

 

<日本人の2倍!?外国にルーツを持つ子ども貧困率

 

日本の子どもの6人に1人が貧困という事実は、今や多くの人々が知るところとなりました。「日本人の子どもが貧困に苦しんでいるときに、なぜ外国人を支援するのか。日本人の子どもの支援を優先すべきだろう」というご意見をいただくことも少なくありません。 (ちなみに、当スクールでは日本語ネイティブの日本人家庭のお子さんの受け入れも行っています)

 

この数値の基になった調査(厚生労働省国民生活基礎調査)では、「国民」とあるものの、無作為による抽出のため、この「6人に1人の貧困の子ども」に外国にルーツを持つ子どもが入っている可能性もあるように思いますが、定かではありません。

 

6人に1人ということは、約16%ということですが、私たちの現場で支援してきた外国にルーツを持つ子ども達のうち、30%が困窮・低所得世帯の子どもでした。ひとり親家庭の子どもの割合も同程度であり、母数が小さいため断言はできませんが、外国にルーツを持つ家庭の経済状況は、そうでない家庭と比べ悪い場合が多いのではないかと考えています。

 

具体的に「外国人」の貧困について把握が可能な調査はありませんが、お茶の水女子大学名誉教授の宮島喬先生による

ci.nii.ac.jp

では、静岡県の調査データを引いて、貧困ライン以下の外国人世帯率は35%との推計をなさっていて、現場での数値に近いのではないかと思います。(子どもについては、それより下がる、とのことでした)   

 

外国人や、外国人ひとり親家庭失業率の高さについては

 

ikitanaka.hatenablog.com

 

にてご紹介しました。日本社会の中で安定した職に就くことは非常に難しく、私たちの現場の周辺では工場のラインで野菜の加工や冷凍食品加工、コンビニ弁当製造などで非正規雇用の保護者が多くみられます。

 

日本人のお子さんも同様ですが、貧困は悪循環を引き起こし、世代を超えて継承されてゆきます。教育は、それを断ち切る一つの重要な手段ですが、外国にルーツを持つ子ども達の高校進学率は、国籍や地域によっては50%を下回っていて、公的なデータはないものの、現場では(主に定時制に進学した子どもの)高校中退率も約20%に上るなど、日本語ネイティブの子ども達に比べ、言語・社会資源等の点でさらに不利な状況に置かれやすいと言えます。

 

 

<貧困の悪循環が第3世代まで!?>

 

高校に進学できなかったり、中退した後は、日本語もままならないまま、友人などによる「ショウカイ」で日雇いや非正規のアルバイトを転々とする、外国にルーツを持つ若者も少なくありません。たとえ日本語の会話がある程度できたとしても、読み書きの力が不十分になりがちな、中卒の「外国人」の若者が急ぎ就くことのできる仕事は多くはありません。

 

マイノリティとしての日本社会における孤独感、限定的な教育機会、先の見えない閉塞感は、ときに非行や犯罪行為、同じ状況に置かれた者同士での早すぎる妊娠・出産を招くことがあります。出産をする外国にルーツを持つ女の子の多くが、父親である相手の男の子も同じ国にルーツを持つ同年代で、生活する力が不足していたり、親が許さず未婚のまま子どもを産み、いつの間にか子どもの父親とは疎遠となっていき、若いひとり親として困難な道を進まざるを得ません。

 

貧困はすでに、第3世代にまで継承されつつあるのだとしたら、私たちは急ぎ対策を講じていく必要があります。

 

 

<みんなの手で暖めることで、孵化するかもしれません>

 

一方、日本語の力を十分に伸ばすことができたり、中学校などでよい先生や支援者に恵まれ、外国にルーツを持つ子どもの受け入れ環境がある程度整備された高校(特に全日制高校)へ進学することができた子ども達では、中退する者は現在のところほとんどおらず、高校生活を楽しみながら卒業までたどり着きます。その後、奨学金を得て欧米へ留学したり、アルバイトで貯めたお金などで国内の大学や専門学校へ進学し、専門職に就く生徒も出ています。

 

外国にルーツを持つ子どもの間にすら広がる格差。

 

経済的な状況に左右されることなく、十分な教育機会と適切な支援環境を充実させることで、子ども達が貧困の悪循環に囚われることのなく、バイリンガルや多文化人材として活躍する道をひらくことができるよう、社会全体で受け皿を作り育ててゆく必要性が今、高まっているのではないでしょうか。

 

以前のエントリーでも書きましたが、外国にルーツを持つ子どもたちは、日本社会の新たなパワーとなるポテンシャルを秘める卵たちです。日本社会をベースとして国や文化をつないだり、複数の文化や言語を有する者として新たな視点を社会に与える存在になる可能性を有しています。

 

ただし、暖めずに孵るヒナはいません。私たち日本社会の手でこの卵たちを大切に守り、育て、日本の新たな原動力へと成長してほしいと心から願っています。