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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

「帰れ」と言わないで-外国にルーツを持つ子どもといじめ

 

 

 

近頃、メディアでは「ハーフタレント」や「外国人タレント」の方々の活躍が目覚しく、欧米だけでなくフィリピンや中国など、さまざまな国にルーツを持つ方々の姿を連日拝見します。

 

最近では、ミス・ユニバース日本代表として選出された宮本エリアナさんや、イランにルーツを持つサヘル・ローズさんなど、今はさまざまな方が過去に経験してきた「いじめ」について言及されていて、初めて「ハーフ」や外国にルーツを持つ子どもたちの苦しみを知った、と言う方もおられるのではないでしょうか。

 

中には過去のつらかった体験をときに「笑い」として語られる芸人さんやタレントさんもおり、逆に涙が出そうになります。いずれも、少しずつ当事者(限られた方々ですが・・・)が発信することのできる土壌が形成されていること自体は良いことだなと思います。カミングアウトされている皆さんの勇気に敬意を表します。

 

 

<『「自分の国に帰れ」って、日本国籍だし!』>

 

現場で出会う子どもたちも、学校をはじめとする日本社会でいじめを経験していることが多いです。いじめが原因で不登校になり、私たちのスクールにやってきた子どもたちもいます。

 

「自分の国に帰れ」と言われるのはよくあることで(あってはならないことですが)、『日本国籍だし!』と、憤りながらその経験を語ってくれた子どもがいました。

 

このほかにも肌の色を「汚い」と言われたり、「クサイ」と言われたり、外国出身の自分の親のことを馬鹿にされたり。
インターネット上には規制なくばら撒かれているヘイトスピーチ
ニュースやバラエティ番組などからは人種差別に配慮のない言動。

 

学校からも、社会からも発せられる差別は外国にルーツを持つ子どもたちの心を(その日本語が理解できるかどうかに関わらず)深くえぐり、時にそれが強い怒りに変わって自分や他人を傷つける、という行為につながる事件も続いています。

 

 

<わが子だったら・・・>

 

外国にルーツを持つお子さんを育てている保護者の方々も、わが子が学校などでいじめられないかどうかを心から心配し、「日本語ができないといじめられるから、(日本語ができない今は)学校に行かせない」と、学校への就学を来日後1年近く控えたケースがありました。

 

たとえばもし、私自身が言葉や文化の異なる外国で子育てをしているとして、自分の子どもがその国の子どもたちにいじめられているとしたら・・・。
でも言葉が不十分なために、社会的な立場が弱いがゆえに、わが子を十分に守ってあげることができないとしたら・・・。

 

私も、子どもをしばらく学校へ行かせることをためらうかもしれません。

日本と言う「外国」で子育てする外国人保護者の方々の不安や苦しみはいかばかりか。

 

 

<保護者のも、受け入れる学校も、子どもたち自身も、みんな不安>

 

先日来日し、9月から私たちのもとで日本語を学ぶことになった外国にルーツを持つある生徒。住んでいる自治体周辺に十分な支援体制がないため、保護者の方が電車を40分以上乗り継いだところにある、当スクールへお子さんを通わせることを決めました。


入所面談が終了すると、保護者の方は「ああ、これで安心することができました」とおっしゃいました。後日就学予定の学校関係者の方へ、受け入れ完了のご報告を差し上げた際には、このご家族同様、学校関係者の方自身も安堵されているご様子でした。

 

少なくとも、ここにはいろいろな国の子どもがいて、生徒と同じルーツの子どもがいて、毎日、日本語を学ぶことができる。中学校や教育委員会とも連携を取り、スクールに通う間も中学校の出席として扱われるよう配慮されている。
本の学校生活に必要な力や情報を得ることができる。

 

・これから日本で子どもたちを育ててゆく、あるいは育てなくてはならない外国人保護者の方々が安心して日本の学校に子どもを通わせることができること。

 

・彼らを受け入れる小学校や中学校、自治体関係者の方々にも、安心して彼らを受け入れることができるよう、情報提供や必要な調整を行うこと。

 

・何よりも、外国にルーツを持つ子どもたちが「日本で学ぶことができてよかった」と感じられる環境をいち早く実現すること。

 

・・・私たちの活動が実現している/実現し得ることの意義と責任の大きさ。あらためて認識しています。

 

 

<根本的な多文化共生の「意識」はどう育むのだろうか>

 

今、外国にルーツを持つ子どもたちやその家族の力を高めてゆくことや、子どもが就学する学校や関係諸機関へのサポートについては、これまで培ってきた経験や知識、多文化コーディネーターをはじめとする優秀なスタッフの尽力である程度、効果的な形が見出されています。

 

一方で、外国にルーツを持つ子どもたちやその家族を受け入れている日本社会、そこに暮らす私たちの、多様性を認め合う、いわゆる「多文化共生」の「意識」を育むための取り組みについては、私たちができていることはあまり多くない状況です。

 

この意識や理解が先にあってさえくれたら、と思うことはしばしばですが、その課題の大きさにおののくと同時に、理想の押し付けではなく、大多数の方々が「当たり前」にこうした意識を持つことができる、そんな状況が、真にどのようなものなのか、正直(私の中で)イメージ仕切れていないという状況です。情けないですが。

 

 

<「あなたならどうする?」>

 

そんな中、先日、twitter上で流れてきたアメリカの「あなたならどうする?」(https://www.youtube.com/watch?v=xlA2KXqEHs4&sns=tw)という番組の動画を見ました。

 

番組自体は、

 

『アメリカのABC Newsが作成している社会派ドッキリ番組です。ドッキリの対象は一般人で、彼らが社¬会問題(人種差別・障がい者差別・貧困・同性愛問題・犯罪など)に直面した際のリアク¬ションを観察します。』

 

というもので、この回は、あるレストランでペルー人親子が差別的な言動に遭うとき(実際は俳優が演技しています)に、周りに居合わせたお客さんたち(こちらは本当にレストランで食事をする素人のお客さん)がどう反応するか、を“実験”したものでした。

 

 

 

アメリカという国には実に多様性の高い国ですが、そこに暮らす人々が、そんなアメリカに暮らしていることを誇りに思っていて、それを侵害する状況に対してためらうことなく戦う姿が映し出されていました。


そしてそんなアメリカの人々の姿は、移民として暮らす人々の心の中に深く「アメリカ」として染み込み、アメリカ人としての誇りを養っているのではないかと感じました。私が悩み、模索し、いまだにすっきりと答えが出ない、押し付けで無く(しかも自然発生的に!)「意識をはぐくむ環境」、のひとつのモデルを見た思いでした。

 

100%の人が、外国にルーツを持つ方々を社会へ受け入れることはきっと難しい。
20%くらいは反対し続けるかもしれないし、差別的な言動を続けるかもしれない。
だけど残る80%の人たちが、「自分を守ってくれる」と感じることができたなら・・・

 

外国にルーツを持つ子どもたちが抱える心の苦しみは、だいぶ軽くなるのではないか。

 

そんなことを、現場で子どもたちが日本語の先生と学ぶ声を聞きながら、考えています。