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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

外国にルーツを持つ”呼び寄せ”の子どもと家族再統合

<現場で出会う子どもの半数以上が「呼び寄せ」の子どもたち>

 

 

「呼び寄せ」とは、外国人の親御さんがわが子を親戚などに預けて来日し、その後日本での生活基盤ができたり、子どもの教育的な節目(小学校修了、中学校修了時など)で、日本で共に暮らすためにわが子を日本に呼ぶことです。

 

私たちの現場で出会う子どもの半数以上はこの「呼び寄せ」と呼ばれる子どもたちです。呼び寄せられて来日した直後に出会うこともあれば、数年後に出会うこともありますが、こうした呼び寄せの外国にルーツを持つ子どもたちの共通の経験は、

 

「実の親と国をまたいで離れ暮らした経験がある」

 

ということです。

 

離れて暮らしている間、外国人保護者の方々は日本で昼夜問わずに働き、必死に暮らしを立て、わずかな収入の中から多くを送金し、わが子を預けている親戚のみならず、母国に暮らす親族全体の生活の面倒を見ているなど、多忙で金銭的にギリギリの生活をしている方もおり、わが子に会うため帰国することが叶わない、ということも珍しくありません。

 

中には、生まれてすぐに親戚に預けられ両親は日本へ出稼ぎに。中学生になって呼び寄せられるまで、一度も実両親と会ったことがなかった、という子どもも。

こうした離別の間に、預け先の親戚から丁寧に養育され、離れて暮らす親御さんが身を削って送金するお金で十分な教育を受け、健やかに成長して来日する子どもたちもいる中で、残念ながらそういう状況ではなく、さらに親御さんと離れ寂しい思いをしてきた子どもも。

 

 

<「この子がこんな子だったなんて」>

 

やっと共に暮らすことができるようになり、「呼び寄せ」として来日した子どもたち。その成長を、親戚から聞いてはいたものの、実際に会ってみると想像していたわが子とは違っていたことで、親御さんが驚くことがあります。

 

「学校にはちゃんと行っているって聞いてたんだけどね、こんなに勉強ができないなんて」といったことや、赤ちゃんのころには気づかなかったものの、成長したわが子が発達障害に苦しんでいたといったことなど。

 

0歳、1歳のころの姿が直接あった最後の記憶であれば、13,4歳になったわが子の姿は記憶とはずいぶん違っていて当然かもしれません。

 

 

<子どもたちにとっても、戸惑いは同じ>

 

ひさびさに実の親と再会した子どもたちも、戸惑いや不安は同じです。

実両親の元に呼ばれた子どもたちはそれでも、家庭の中で母語での会話ができ、少なくとも意思疎通をはかることが可能です。日本社会の様子がわかってきたり、日本語が上達したり、新しい学校になれたりするうちに「家族」の絆を再び深め愛情豊かに暮らしている子も少なくありません。

 

一方、お父さんやお母さんが離婚し、日本人男性と再婚した母親に呼ばれた子ども

などは、新しい“お父さん”である日本人男性や、その人との間に生まれた父親の違うきょうだいとの関係構築からはじめる必要があり、さらに家庭内の主たる言語が日本語となっているケースでは、家庭の中ですら安心しきれない環境になっていることも。

 

親御さんが離婚し、ひとり親となって(主に)母親の元に呼ばれるケースもあり、こうした場合は昼夜働く親御さんが、来日直後のわが子とすれ違いの生活になってしまいほとんど顔を合わせることができない、という場合もあります。

 

いずれの場合も、新しい環境で新しい家族やひさしぶりに会う親と楽しく暮らしてゆける子どももいれば、親子の間に生まれた溝や、新しい家族との関係構築がスムーズに行かず、家出を繰り返したり、強い反抗が見られたり、といった子どももいます。

 

 

<「やはり一緒には暮らせない」>

 

親御さん自身が久しぶりに会うわが子のこうした反応に、どうしたらよいかわからず、悩みを抱え込んで苦しんでいたり、再婚した日本人男性とわが子との関係作りがうまくいかなかったり、など、最終的に「やはり一緒には暮らせない(暮らさない)」と、子どものみを再び母国の親戚の元に帰す、といったケースも。

 

異国で新しい家族を築く親と、そこになじめずに再び親戚の元に送り返される子ども・・・

 

義務教育時期が終わるとすぐに家を出て、友人のところを転々としながらアルバイトをし、家族の元にはほとんど帰らなくなった子ども・・・

 

そんなケースに出会うとき、家族の「再統合支援」の必要性を感じます。

 

家族再統合は、児童虐待などの文脈では必ずしも親子が離れて暮らしていた状態から、共に暮らすことを目指して行われる支援ではないようで、さまざまな形態があることがこの愛知県児童相談センターのマニュアルからもわかります。

 

 

ただ、ここでは外国にルーツを持つ呼び寄せの子どもたちが、その保護者と離れて暮らしていた一定期間の後に、いかに日本国内で共に暮らす日々がスムーズに始まるよう、親子の関係が再びまたは新たに構築され、愛情を持って支えあうことができるようにする、という意味で「再統合」と呼んでいます。

 

私たちの現場では、再統合を目的としたサポートは行ってはいませんが、子どもたちが安心して過ごせる場のひとつとして、子どもたちの学習状況や性格、集団の中で見せる表情などを親御さんに伝えることなどを通して、家庭の外から彼ら家族の新たなスタートを応援しています。