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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

外国人散在地域に暮らす外国にルーツを持つ子どもの孤独

外国にルーツを持つ子ども・若者

(写真:昨年度の卒業制作作成の様子。遠くは県外から子どもが通い、同じ境遇にある子ども達同士の仲間作りの場となっています)

 

 

<集住(しゅうじゅう)と散在(さんざい)>

 

日本に暮らす外国人の方々について語る時、それが集住地域であるのか、散在地域であるのかで課題や状況が変わってくることがあります。

 

集住も散在も、「その地域に外国人がどのくらいの数暮らしているか」、外国人人口の密度について表す言葉です。外国人集住地域は、愛知県や静岡県、群馬県、東京都、神奈川県などの自治体が挙げられます。こうした外国人集住自治体のうち、特に中南米にルーツを持つ居住者が多い一部の自治体は

外国人集住都市会議

に参画し、多文化共生のさまざまな課題について研究を行ったり、政策提言を行ったりしています。

 

外国人集住地域では、ひとつの団地群に暮らす大多数の居住者が外国出身者であったり、地域の特定の小学校の生徒のうち半数近くが外国にルーツを持つ子どもであったりと、自治体内の居住エリアに外国出身者がまとまって住んでいるケースが良く見られます。このため、その地域に設置されている看板が多言語表記を標準としていたり、学校内で手厚いサポートが受けられるなど、自治体も資源を投入しやすい環境です。また、NPOや市民活動団体等による支援も比較的活発に行われ、外国にルーツを持つ子ども支援の先駆的活動エリアとなっている集住地域も含まれています。

 

一方、散在地域では地域内に居住する外国人数自体が少なく、また自治体内のバラバラのエリアに散らばって居住しているため、自治体内にある小中学校でも外国にルーツを持つ子どもがゼロという学校もあれば、1人いる、2人いる、とごく少数を抱える学校が点在している状況です。

 

こうした散在地域に暮らす外国にルーツを持つ子ども達に対して、特別に資源を割いて支援を行うことは人的にも予算的にも難しい自治体が多く、散在地域の外国にルーツを持つ子ども達をどのように支えるか、は大きな課題となっています。

 

 

<日本語指導を必要とする児童生徒のうち、50%は散在地域に>

 

 

 

文部科学省が毎年行っている「日本語指導を必要とする児童生徒」に関する調査(平成26年度版)によると、その市町村内部に日本語指導を必要とする外国人児童生徒が「5人未満」である自治体は、全体の 50%に上り、同じく日本語指導が必要な日本国籍児童生徒でも、「5人未満」の市町村が 326 市町村で全体の57%を占めています。

 

学校別に見ても、外国にルーツを持ち日本語指導を必要とする児童生徒が2人未満しか在籍していない学校が小中高校全てにおいて全体の50%を超えており、散在地域に暮らす外国にルーツを持つ子どもの多さが伺われます。

 

(図はいずれも、文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 26 年度)」より抜粋)

 


<支援も仲間もない子ども達・・・>

 

こうした散在地域に暮らす外国にルーツを持つ子ども達にとって、何よりも辛いのは同じ境遇にある仲間の不在ではないでしょうか。日本人のクラスメートがいかに優しさを持って接してくれたとしても、言葉や文化の違いだけでなく、外国にルーツを持っているというアイデンティティの揺れを共に分かち合い、支え合うことのできる存在の欠如は、強い孤独感を子どもたちにもたらすのではないかと考えています。

 

ある子は、スクールの中では休み時間も授業中も休むことなく喋り続けている「おしゃべり」ですが、中学校にいる間は(日本語が上達した後も)一言も話さない、という期間が数年続きました。「ここ(スクール)じゃなかったら、怖くて日本語話せないよ!」というその子の言葉が強く印象に残っています。(今では中学校でも「おしゃべり」になることができました)

 

私達の現場にやってくる子どもたちが暮らすエリアは、集住地域と散在地域が隣接し合うエリアであり、居住地によっては外国にルーツを持つ子どもたちが多く在籍する小中学校に入ることができる子どもがいる一方で、すぐ隣の自治体に暮らす子どもは、その学校でその子1人だけ、という状況を経験しています。

こうした子どもたちがスクールを通して出会い、共に学び支え合う事で「学校では一人だけど、スクールにくれば仲間がいるから」と、困難な状況をなんとかしのいでいるように見えます。

 

 

<散在地域の子どもたちにも支援を届けたい>


現在、このプロジェクトと並行して散在地域の子ども達や、物理的な要因で支援へアクセスができない外国にルーツを持つ子ども達のためにICTを活用し、当スクールの授業をライブで受講することができるよう準備を進めています。

 

当スクールの専門家による日本語教育支援が、インターネットを通じて全国に暮らす孤独な子どもたちに届くこと。こうした外国にルーツを持つ子どもたちが、オンライン上で同じ境遇の仲間と出会えること。そんな日の実現を目指しています。
(うまくいくのかな?ドキドキです!)

 

「たまたまそこに住んだだけ」で、教育の機会に格差が発生している現状。
「支援の場に来られなければ支援が受けられない」環境。

 

新しいテクノロジーを活用することで改善する可能性があるのであれば、外国にルーツを持つ子ども達のための数少ない専門機関として、積極的にチャレンジしていきたいと考えています。