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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

学校で日本語支援受けられていない外国にルーツを持つ子、7,000人

<7,000人の日本語を母語としない子ども、無支援状態>

去る12月1日、文部科学省にて外国人児童生徒の支援体制について議論する有識者会議が開かれました。

 

www.nikkei.com

 

現在、文科省の調査によると、日本の公立学校(小、中、高、特別支援)に在籍する「日本語指導が必要な外国人(外国籍)児童生徒」は29,198人います。そして今回の一連の報道では言及がありませんでしたが、日本国籍を持つ、日本語指導が必要な児童生徒がさらに7,897人在籍しており、全体で約37,000人の子どもたちが日本語がほとんどできず、学校の勉強がわからない状態で通学しています。

(出典:文科省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 26 年度)」の結果について」)

 

こうした子どもたちが公的に日本語教育支援を受けられるかどうかは、これまで自治体により大きな格差がありました。

 

そのことについては、ジャーナリストでNPO法人8bitnewsの代表である、堀潤さんの記事でも触れられています。

www.huffingtonpost.jp

 

先日、前述の文科省の調査を再確認すると、現在日本語指導を受けられている子どもは 外国籍日本国籍あわせて約30,000人で、つまり、7,000人もの子どもたちが、日本語の支援がまったくない状況で放置されていることになることがわかりました。

 

「日本語がわからず学校の勉強についてけない」という苦しい状況を打開するための機会すら提供されていない子どもが7,000人もいることに改めて驚きました。子どもたちが一言も周囲の言葉がわからない状況で、強い孤独に耐えながら学校に通っているのではないかと思うと、本当に胸が痛みます。

せめて学校外での支援が彼らに届いていることを祈るばかりです・・・。

 

<散在(さんざい)地域への対応が急務>

冒頭でご紹介した日経の記事にもあるように、対象児童生徒の少ない、いわゆる「外国人散在地域」で、どのように子どもの日本語教育を支えていくか、が課題です。

外国人散在(さんざい)地域については、以下の過去記事に詳しく書きましたが、日本語指導が必要な児童生徒が、地域に数名、ある学校に1人、2人しかいない、というような状況です。

 

ikitanaka.hatenablog.com

 

文科省の調査でも、日本語指導が必要な児童生徒のうち、実に43%以上が、その学校にこうした子どもが1人しかおらず、こうした外国人散在地域では自治体が独自予算を確保し、指導が可能な人材を手配する、ということが困難であり、積年の課題となっています。

 

<外国人の多い地域では、先進的な体制整備が進んでいます>

日本語を母語としない子どもたちの日本語教育を公的に支援することについては、納税者が納得しないから(外国人住民も納税者なのですが)、と消極的な自治体もある中で、比較的外国人居住者が多い地域では先駆的な取り組みも拡大してきています。

 

先日、関係者が驚いた(喜んだ)ニュースをひとつご紹介します。

www.kanaloco.jp

横浜市が、日本語を母語としない児童生徒向けのプレスクール(日本語の初期指導や日本の学校生活などについて学ぶプログラム)を開設することになり、そのために新しい建物を建設する、というものです。

1階には地域住民が利用できるコミュニティスペースがつくられ、その2階と3階にプレスクールが入ります。住民との交流もかねた、先駆的な取り組みです。

 

こうしてしっかり公的に日本語教育を自治体がサポートできるのは、外国にルーツを持つ住民の多い地域ならでは、の施策ですが、子どもの教育機会が済んでいる自治体によりこれほどまでに差が生まれてしまっている現状には本当に強い危機感を抱いています。

  

<散在地域の課題は広域連携とICTで一定の解決が可能>

 

エリアの広さにもよりますが、1つの自治体での単独支援が難しい場合は、拠点となる学校や施設を設置し、複数の市町村が共同で運営する広域対応を検討してはどうでしょうか。

公共の乗り物でアクセスしづらいエリアもあるかと思いますが、スクールバスを導入することでアクセスを確保し、子どもたちを各地から集めて集中的に日本語指導を行うことが効果・効率の面でも優れているのではないかと考えています。

私たちの現場にも、東京の西側全域、さらには隣接する埼玉県や神奈川県からも通所する生徒がいて、10を超える自治体から受け入れを行っています。

あるいは、テクノロジーを利用し、日本語教育をオンラインで受けられるようにするということも一考の価値があります。こちらは全国どこでもネット環境さえ整備されていれば受講が可能となりますし、コスト的にも最も安く運用できる可能性を秘めています。

 

広域対応も、ICTの活用も、いずれもメリット、デメリットがあると思いますが、何よりも肝心なことは、今日本語教育をまったく受けらていない子どもたちがいるという「0(ゼロ)」の状態を、一刻も早く「1(いち)」にすることです。

 

その一歩は、初期的には100%にはならないかもしれませんが、子どもたちが教育の権利を剥奪されているとも言える現状は、すぐにでも変えていかなくてはなりません。