読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

2015年もっとも印象に残った外国にルーツを持つ子ども・若者関連ニュース

f:id:ikitanaka:20151228133859j:plain

 

2015年も残すところあとわずか。

今年2015年、仕事収めの今日(12月28日)、あらためて外国にルーツを持つ子どもたちや若者に関するニュースのうち、印象に残っているものをご紹介して、終わりたいと思います。

 

<1.教育関係のできごと>

 

●「虹が消える・・・」-文科省虹の架け橋教室終了

 2015年2月、リーマンショックの余波を受けたくさんの外国にルーツを持つ子どもたちがブラジル人学校等に通えなくなった事態の緊急対策として、2009年より実施されてきた「定住外国人の子どもの就学支援事業」(通称:虹の架け橋教室)が終了しました。その後、「定住外国人の子どもの就学促進事業」として自治体が主管となり、それまでNPO等へ全額拠出していた補助金を、自治体が3分の2を負担し、国が3分の1を負担する形式に改められました。

www.nhk.or.jp

 これに伴い、それまで虹の架け橋教室を運営してきた団体の中には教室を閉鎖するに至った事例や、時間数・規模を縮小せざるを得なかったケースもある一方、新しい枠組みでスタートした事業を受託する自治体も限られており、外国にルーツを持つ子どもの教育環境に、一層の自治体間格差が生じました。

 同省の2016年度予算案では当該事業が組み込まれている「帰国・外国人児童生徒等教育の推進」のために2千万円の予算を増やしています。

 

●外国人児童生徒等教育支援のための有識者会議開催

 前回のエントリーでも書きましたが、2015年11月に文科省において「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」が開催されました。会議では今後、来年の6月までの間に、学校における外国人児童生徒等に対する日本語指導体制の整備や、日本語指導に携わる教員や支援者の養成・確保、指導内容の充実、外国人の子どもの就学、進学、就職等への対応について等の諸課題が検討される予定です。

 

www.nikkei.com

 

 報道では、日本語ができない子どもの教育について「国が対策に乗り出した」との表現がありました。日本語指導が必要な児童生徒の増加に伴う危機感が土台となり、国として外国にルーツを持つ子どもたちの教育をどう保障して行くのか、責任と予算と実効性を伴う議論となることに期待を寄せています。

 

<2.自然災害に関するできごと>

 

●ネパール大震災を受けて、在日ネパール人の子ども・若者が支援呼びかけ

 2015年4月25日にネパールで発生したM7.8の大地震では多くの方々が犠牲となりました。日本では近年新たに来日するネパール人が増加し、ネパールにルーツを持つ子ども・若者も増えています。こうした在日ネパール人の方々が、大地震発生後に募金活動などを行った様子などがメディアでも多数報じられましたね。

www.kahoku.co.jp

 私たちの現場にもネパールにルーツを持つ子ども・若者が多く在籍していますが、彼らが中心となった募金活動を実施した他、周辺地域に暮らすネパール人の若者たちが追悼集会を開催し、数百名が参加するなど、ネパールコミュニティの存在を感じたできごとでもありました。

 ネパールの復興はまだまだこれから。息の長い支援が必要ですね。

 

●鬼怒川決壊水害でブラジル人学校生徒半数被災

 今年9月上旬に発生した関東・東北水害で、もっとも大きな被害を受けた地域のひとつ茨城県常総市には、約2,000人のブラジル人が住んでいます。ブラジルにルーツを持つ子どもたちが通うブラジル人学校も、生徒の半数の家庭が被災したとのことでした。

www.yomiuri.co.jp

 常総市ブラジル人学校、エスコーラ・オプションでは水害発生より3週間足らずで学校が再開され、そこに通う100名以上の子どもたちにとって、日常を取り戻す足がかりとなったのではないでしょうか。

 この水害でも、防災無線の日本語がわからなかったり、避難所で言葉の壁に苦労したりなど、災害時に日本語を母語としない方々とどのように助け合って行くべきか、課題が再び浮き彫りとなりました。私たちもあらためて、地域の数少ない外国にルーツを持つ子どもの支援機関として、災害時にどう対応するかを考えさせられました。

 

<3.芸能関係のできごと>

 

●外国人タレント、 ”ハーフ”タレントの活躍

 昨年からもその傾向はありましたが、2015年は本当に外国にルーツを持つタレントやモデルさんなどの活躍がめざましい一年だったな、と思います。テレビの世界ではこれまでどちらかというと欧米にルーツのある方々の活躍が目だっていたように思いますが、近年はアジアにルーツを持つ方の活躍も増え、「○○がフィリピンへ”里帰り”」と言った企画も目にするようになりました。(”里帰り”が正しい表現かどうかは問題あり、ですが・・・)

www.nikkei.com

 中には、差別的な言動を受けたことやいじめの体験などをテレビを通して伝えてくださる勇気ある外国にルーツを持つタレントさんもいらして、彼らのような著名な方々が体を張りながら道を切り拓いてくれているようにも感じています。

 一方、テレビの外側では外国にルーツを持つ方々に対するヘイトスピーチSNS上での嫌がらせなどは相次ぎ、あろうことか、子どもに対してもその刃が向けられている状況で、今、日本の社会ではこれまでの「単一民族」幻想が崩れ落ちることに対する恐怖と期待が同時に渦巻き、揺れ動いている狭間にいるのだろうか、とも思う一年でした。

 

ミス・ユニバース日本代表宮本エリアナさんの存在

 今年、印象に残った最後のニュースは、ミス・ユニバース日本代表に、”ハーフ”としてはじめて選ばれた宮本エリアナさんのこと。彼女が「私は日本人」と言い切る姿や、”ハーフ”の友人の自死をきっかけにミス・ユニバースへチャレンジすることで人種への偏見や差別をなくしたい、とがんばる姿が本当に印象的でした。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 彼女のように、アフリカにルーツを持つ子ども・若者は、特にその容姿についていじめや差別を受けることが多いように感じます。ありのままの自分が社会から受け入れられないことの悲しみや悔しさや理不尽な想いは子どもたちの中に降り積もり、大きく傷つけられることも少なくありません。

 当事者である宮本さんが訴える姿は、こうした子どもたちの心の傷を少し癒したかもしれません。勇気を与えたかもしれません。けれど、本来ならば当事者が声を上げる以前に、日本社会の大人が人種やルーツによる差別や偏見に気づき、変えていかなくてはならないのではないでしょうか。第2、第3の宮本さんの登場を待っているだけではいけないのだ、と、今年を振り返りながら改めて1人の大人として努力をしなくてはならないと思っています。

 

<おわりに>

 今回、2015年の1年間をまとめるにあたって、取り上げるかどうか迷った出来事があります。それは、今年2月下旬に神奈川県川崎市で起きた、当時中学1年生の上村遼太君が多摩川の河川敷で殺害された事件です。

 つい2日前、日刊スポーツで事件について書かれた記事が出ていました。

www.nikkansports.com

 あの事件は、本当に衝撃が大きく、悲しくて苦しくて、たくさんの事を考えさせられました。当時私が書いたブログ、

 

ameblo.jp

には数万件のアクセスがあり、6千回以上シェアされるなど大きな反響がありました。それはおそらく、私が書いた記事が大半の記事やニュースとは異なり、亡くなられた上村君やそのご家族ではなく、リーダー格であった少年の立場に立脚したものであったからです。

 外国にルーツを持つ、というだけで擁護する気はない。かと言って、そのリーダー格の少年の背後にある(可能性のある)ことを誰一人言及せずに、あの事件が人々の記憶から消えてしまう事は避けたい。そう思い、悩んだ末に書いた記事でした。

 私は2015年、外国にルーツを持つ子ども・若者が直面する困難をを社会化することをミッションに掲げ、これまでにないくらい発信に力を入れてきました。そのミッションはまだ達成できないけれど、あれから10ヶ月が経過し、人々の記憶が薄れ始めたように見える今、あらためて事件を思い起こしながら、2016年も再び、外国にルーツを持つ子どもや若者たちがおかれている現状や課題をしつこいくらいに伝えていこうと決意しています。