読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

ママ友は外国人!?―小学校で外国人保護者と出会った時、日本人ママ・パパができること。

気づいたらいつの間にか4月も半ば。今年、お子さんがピカピカの1年生になった!という保護者の皆様、ご入学おめでとうございます!

新学期を迎えた学校の先生方、子どもたちのことを今年度もどうぞよろしくお願いします。

 

私の長男も昨年の今頃、ピカピカの1年生に。入学の準備に何日も夜なべしたことを思い出します・・・(涙)。入学後も、「学校に行きたくない」から始まり、しばらくは送り迎えが必要で、学童は嫌がるし、担任の先生からはお友達とのトラブルや本人のキャラ(?)のことで電話はかかってくるし、で、夏休み明けくらいまでは本当に「小学1年生の壁」を感じざるを得ない日々でした。(今も少なからず壁は感じますが、入学後の半年間は本当に慌しかったです)

 

私の長男の入学した小学校には、外国にルーツを持つ子どもたちが多数通っています。当然、入学したてのピカピカの1年生の中にも外国にルーツを持つ子どもと外国人保護者が含まれていて、昨年のこの時期、(何もなかったので、必要に迫られて自主的に・・・)長男と同じクラスになった外国人保護者の方々のサポートをしていて、これなら保護者同士でできるなー思うことがありましたので、以下の4点でご紹介します。

 

f:id:ikitanaka:20160414124017j:plain

1:日本語がわからない外国人保護者って何が大変なんだろう?

2:ちょっとエクササイズ。外国人保護者体験

3:放っておいたら大変なことになるかも・・・

4:ママ友・パパ友だからこそできること、あります

 

 

【わが子が小学校へ・・・日本人保護者以上に「わからなくて、不安」】

さてさて。わが子が初めて小学校に入学するということは、親にとってもまた全てが新しい世界に飛び込むことです。自らが日本の小学校に通っていれば、おぼろげな記憶はあるとは思いますが、親として小学生の保護者になるのは、みんな初めてです。

 

日本人保護者でさえ、わからないことが多い小学校での生活。日本語が苦手な、日本の小学校に通った経験の無い外国人保護者がさらなる不安を抱える、という状況は創造するに難しくはありません。

 

日本人保護者であれば、いちおう、役所や学校から出された「おたより」を読み、何日に何があるのか、子どもはどう動くのか、何を持って行き、何は持っていかないのかと言った情報を得ることができますが、外国人保護者はそうではありません。

 

「ふでばこ」「うわばき」「きゅうしょくぶくろ」「がっきゅうかつどう」「しゅうだんげこう」

 

日本での生活が長い保護者であっても、なかなか日常生活で耳にする単語ではありません。それが「知っている」という前提で、日本語で情報が提供されてもよく理解することができません。小学校低中学年くらいの子どもには、いくらその子が日本語と母語ができたところで、学校からのお便りを読んで、母語に訳して親に伝えるという作業は困難です。

 

【外国人保護者の気持ちになってみよう!】

 

こちらを見てください。

この画像は、学校から出されたある内容についてベトナム語に翻訳したものです。

f:id:ikitanaka:20160406121945p:plain

ベトナム語がわかる方でなければ、ここに書かれている内容はまったく推測もできないのではないでしょうか。でもこれは学校から出されたお便りなので、わが子にとって重要なものかもしれない、ということはわかります。そして、何かを書いて提出しなければらないようだ、ということくらいは想像できるかもしれませんが、わかることはそのくらいだけ。

 

さて、あなたが何らかの都合で言葉も文化もわからないベトナムにお子さんと住み、お子さんはベトナムの現地校に通っているとして、お子さんが学校からこのお便りを持って帰ってきたら、あなたならどうしますか?

 

今日も、明日も、明後日も、こうしたお便りが何枚も届いたら?そして何もわからないうちに提出期限を逃していたり、給食費が「滞納」になっていたり、子どもが忘れ物ばかりして困ると学校から連絡があったら?

 

私なら辞書を引いたりなど、努力はするとは思いますが、それ以前に「親」としての自信を失ってしまいそうです。わが子がせっかく小学校に入学し、ピカピカの1年生としてスタートを切ったのに、親として十分にそれを支えることができない不甲斐なさに。

 

読めないお便りが毎日のように届く

わが子に忘れ物をさせてしまう

学校の宿題を見てあげられない

わが子は日本語が上達する代わりに母語を失い会話が成立しなくなっていく

などなど。

 

 【外国人保護者の日常は喪失的経験の積み重ねかも・・・】

日本語がわからない外国人保護者の日常は、子育ての面においても生活の面においても、大小さまざまな「喪失的経験」の積み重ねが多く、日本社会の誰もがそうした意図を持っていなかったとしても、積極的な支援があってようやく-(マイナス)が0(ゼロ)になるような日々なのではないかと感じています。

 

本来、親というのは子育ての様々なステージ毎に、ゼロからのスタートを情報や経験や周囲の支えで1、2、と積み上げていくように、子どもと共に成長していくものなのだろうと私自身の経験でも感じるのですが、外国人保護者はそれがゼロ、-1、-2とどんどん差し引かれているような状況なのではないか、と。

 

外国人保護者が子どもの新生活に必要な情報を得られず、持ち物を忘れたり、提出期限が遅れたりすることで、「提出期限が守れない困った家庭」や「忘れ物の多い困った子ども」という”印象”が積み重なっていく可能性があります。

(本当は、情報が伝わっていないだけなのに・・・)

 

こうした状況が続けば、学校では「外国人保護者は教育に無関心」であるかのように捉えられてしまったり、外国人保護者は子どもの新生活を支えられないことで、親としての自信を喪失してしまったり・・・子ども自身も親には頼れない、と考えたりと、親子間や学校―家庭間の信頼関係に影響が出ることも考えられます。

 

【学校内で外国人保護者の方と出会ったら、今すぐできること。】

先日、わが子の保護者会に出席して改めて気づいたのは、保護者会ではけっこう重要な情報がアナウンスされる、ということ。担任の先生は一堂に会した保護者を前に、あまり余裕がない、ということでした。

 

教室内に着席した外国人保護者に対して「話しについていけているかな?」「配布資料はりかいできているかな?」と気をまわせるような状況ではなさそうで、当然、外国人保護者の方はわからない日本語で進む保護者会の間、下を向いたり、スマホをいじっていたりという状況。

 

でも先生はかなり大量の情報を保護者に伝達する必要があり、それどころではない様子。後からフォローするのかな、と思ったら会が終わった瞬間に外国人保護者の方々は帰ってしまい、そういうチャンスもなさそうでした。もしかしたら後日個別にフォローしていたのかもしれませんが。

 

もちろん、保護者会のために多言語資料を用意したり、話しについていけているか確認しながら進める先生もいるとは思いますが、大半はそうではないのでは?「外国人保護者がどこまで理解できているか、を理解することが難しい」というのは支援の現場でも感じることです。

 

そんな時に、周りを見渡す余裕のある保護者同士だからこそ気づくけることってありませんか?

 

あの人は相槌をうっているので、理解していそうだなとか。

下向いちゃっていて、ぜんぜん日本語わからないのかな、とか・・・

 

こんな風に外国人保護者の方の様子が気になった時に、保護者自身の負担は少なく、それでいて先生や外国人保護者の方々の役に立つサポートの方法をお伝えします。

 

 

その1:無料の支援リソースを活用する

実は、文科省が全国にある自治体で多言語に翻訳された学校のお便りのテンプレートを、1つのサイトに集約して公開しています。

そこに掲載されているいずれのデータも無料でダウンロードすることができ、日付や必要事項を記入するだけで、多言語のお便りを作成することができるようになっています。

 

その名も「かすたねっと」

(なんで「かすたねっと」なのか不明と思ったら、書いてありました)

 

これは本当に役立つサイトで、私たちの支援現場でも活用しているのですが、残念ながら学校の先生方にはこの情報があまり届いていません。外国人保護者との対応におそらくもっとも苦慮しているのが学校の先生。ただでさえ多忙を極める日々に、外国人保護者のために辞書を引いてお便りをすべて翻訳・・・というのは難しい。しかも、学級によっては何言語にもまたがっていたりして・・・。

 

f:id:ikitanaka:20160414112420p:plain

 

そんなときに、この「かすたねっと」にアクセスすれば、何十分の一の労力で、しかも無料でおたよりを作れてしまうんです。

 

外国人保護者の方々に適切な情報が届かず、先生も保護者もそして何よりも子ども自身、三方困ってしまう、という状況はこのサイトの存在を知ればだいぶ改善されるのではないかと思うくらいです。

 

ちなみに、あのベトナム語のお便りもこちらから拝借しました。実際にある自治体で翻訳された学校文書です。・・・せっかくなので外国人保護者のモヤモヤ感を体感するために、どんな内容のお便りだったか、の答え合わせは次回にでも;)

 

その2:外国人保護者の方自身に役立つサイトを紹介する

 外国人保護者の方が活用していただける無料の支援リソースも、支援団体や自治体などが作成したものがインターネット上で公開されています。

 

特に、昨年3月に公開された「愛知教育大学 外国人児童生徒支援リソースルーム」の「小学校ガイドブック (下図)」が小学校生活に必要な情報や持ち物、学校への連絡などのノウハウがぎゅっとつまっています。

f:id:ikitanaka:20160414110652p:plain

ポルトガル語・スペイン語・中国語・タガログ語・英語の5言語で、PDF版と電子本版も!(保育園・幼稚園版もあります) 

 

このサイトのリンクを教えてあげるだけでも、外国人の親御さんの戸惑いや不安が軽減されそうです。

 

その3:自分もちょっとだけ、外国にルーツを持つ家族のことを知ってみる

言葉ができなくても、同じ「親」という立場で分かり合えること、共感しあえることがきっとあるはずです。もう一歩、外国人ママ友、パパ友と仲良くなるために私たち自身が彼らの置かれた状況を知る努力をしてみませんか?

 

私たちも、外国人保護者や外国にルーツを持つ子どもたちの状況や課題、必要な支援やこれから何ができるか、などを、もっとたくさんの方々に知っていただくためにウェブマガジンを創刊しました。

 

年間100名前後の新たな外国にルーツを持つ子どもたちやその保護者との出会いを通して見えてきたこと、現場での実践を元にみなさんにお伝えします。このブログのように役立つ支援ツールなども随時ご紹介しますので、ぜひ登録してみてください。

 

yscglobal.publishers.fm

 

異なる言葉や文化を持つ方々と共に暮らす「多文化共生社会」って言うと、なんだか夢物語のようにも思えますが、「ママ友」だったり、「パパ友」だったり、子育てという視点を通してみると、共通項がたくさん見えてきます。そして、その分だけ何が足りないのか、なにがあったらいいのか・・・当事者に近い視点で思いやることができるんでしょうね。