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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

ある日あなたが日本語が通じない子どもの継父になったら。

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「外国にルーツを持つ子どもの親」=外国人とは限らない

年間100名前後の外国にルーツを持つ子ども・若者たちと出会う、私たちの現場

子どもの支援ということで、その親御さんたちのサポートやご家庭との協力連携も重要な活動の一つとして位置づけています。

 

現場で出会う保護者の方々を(あえて)いくつかのパターンに分けると、

 

1)両親共に同じ外国の出身者(外国籍

  →最近、父親と母親の出身国が外国だが違う国同士というご家庭も(こうしたご家庭については以前こちらの記事に)

2)父・母のいずれか(大半が実父)が日本人で、いずれか(大半が実母)が外国出身

  →実父が日本人男性というケースと、実父は外国人男性だが離婚しており、継父が日本人男性というケースがあり、だいたい4:6くらいで後者が多い

3)実母が外国出身者でひとり親家庭

  →こちらも、2)と同様に実の継親が日本人で日本国籍を持つ子どもと、実の父親が外国人で外国籍の子どもとに別れます。

 

となります。

(おそらく、もう少し時間がたつと(あと数年)、4)として、日本で幼少期を過ごしたり、10代で来日した外国にルーツを持つ”元”子どもたちが「保護者」となって、現場に現れる”パターン”が登場するはずです。)

 

いずれのケースも、「両親と共に飛行機に乗って新たに来日した」というお子さんは少なく、親御さんがお子さんを親戚などの元に残して先に来日し、日本国内での経済的基盤が整った段階や、お子さんの教育の「節目」、ビザが出た時などに、数年間離れて暮らしていた我が子を呼び寄せるケースが大半です。

 

家庭内で唯一の「日本語ネイティブ」が頼り

 

1)や2)のケースでは実の親御さんが、お子さんが赤ん坊や幼少のころに、来日するため別離し、数年後・十数年後に日本に呼び寄せてはじめてゆっくり生活を共にする、というご家庭もあり、親御さんの中ではまだ「幼い子」であった我が子の成長や変化に当初は戸惑うという姿も見られます。

 

一方で、2)のケースでは、日本で外国出身の女性と出会った日本人男性がその女性と再婚し、女性が出身国に残してきた「我が子」を日本に呼び寄せることが多く、この場合、日本人男性は日本語のわからないお子さん(時に10代の若者)の「父」となることも少なくありません。そして、日本人男性はほとんど女性や子どものが話す外国語を理解できないことも珍しくありません。

 

大半のこうしたご家庭の場合、お母さんである外国人女性が日本語の会話がある程度できるため、お子さんとお父さんとの間の通訳としてコミュニケーションをサポートしているようですが、中には日本語があまり得意でないお母さんもおり、お父さんとお母さんの共通言語がほとんどない場合、お父さんとお子さんの間を「つなぐ」ことが難しい状況に陥る事も。

 

そんな状況の中でも、日本語の力が十分でない妻の「連れ子」である日本語がまったくわからない子どもの就学手続きや、学校との連絡などを、家庭内で唯一の日本語ネイティブである男性ががんばって担わなくてはならない場合が増えます。

そして日本人男性にとって仕事と子どもの教育との両立が大きな「負担」なのではないか、と感じられる場合も。意外と日本語ができない段階では、学校との連絡調整がかなり頻繁に必要になったり、何かとお子さんの教育に手を掛けなくてはならない場面が多いのです。

 

共に暮らす事になった「我が子」と、言葉が通じなかったら・・・

 

外国出身の妻の子を、日本の自らの元へ呼び寄せるご決断は本当に重たいものだったのでしょう。そしてその決断の先に、思わぬ大きな負担が待っていて、「これは大変だ」と感じている方も中にはおられるのではないでしょうか。その負担の大きさに、ギブアップしてしまいそうになることも、あるのではないでしょうか。

 

そんな時に活用していただきたいのが、全国にある外国にルーツを持つ子どものサポート団体です。

 

同じような状況のご家庭を数多く見てきていますし、団体によっては学校とご家庭との間に入ってコミュニケーションを支援もしています。日本語の十分でない親御さんのためのクラスがあることもありますし、学校からの連絡文書を翻訳したり、わかりやすく説明してくれたりすることも。

 

そのほか、日本語がわからないお子さんの高校進学や学校生活に必要な情報の提供などもあり、ご夫婦でぜひこうした団体のサポートをご活用いただきたいところです。

 

 こちらのリンク先には、外国にルーツを持つ子どもの学習支援に関わる団体のリストがまとめられています。

http://harmonica-cld.com/category/stakeholder/st-japan 

まだ全てが網羅されているわけではないようですが、各地の国際交流協会やボランティアセンターなどでも情報が手に入るケースもあります。

 

なによりも、子どものサポート団体での活動の中心はお子さんの「日本語教育」であるところが大半ですので、お子さんの日本語が上達するにつれ、お父さんとのコミュニケーションもスムーズになってくるでしょう。

 

そして最後に、こうした日本語がわからないお子さんの父親となった日本人男性の方に気をつけていただきたいことを一つ。

 

  • 共に暮らす事になったお子さんがまだ10才未満のとき・・・

 お子さんがこれから日本語を十分に読んだり、話したりすることができるようになるために、お子さんとお母さんの共通言語である「母語」を忘れないようにすることと、母語の力を高めて行く事が大切です

 母語の保持や向上をしないまま放置すると、年齢が低いお子さんほど日本での生活が長くなり日本語が上達する一方で、どうしても母語を忘れがちになったり、まったくわからなくなってしまうことがありますが、これが後々、お子さんの発達に大きな影響をもたらす可能性があります。

(現場ではそうした事例を多く見てきています。母語の大切さについては、こちらのサイトなどが参考になります)

 家庭の中で、日本語が聞こえず、わからない外国語ばかりが飛び交う時間が長いと、疲れやストレスを感じる事があるかもしれません。それでもこの母語維持を助ける事のできる団体はあまり多くなく、現在は家庭の努力が唯一の手段であることも少なくありません。

 お母さんが子どもになるべく母語で話しかけることを、重要な子育ての場面としてあたたかく見守っていただけたらと思います。それが後々になって、お子さんの日本語の力を高めるための大切な「基盤」となります。

 

  • お子さんが10才を越えているとき・・・

 母語の力が大切になるという点では、10才未満のお子さんと変わりませんが、10歳を超えたお子さんの場合、母語をまったく失ってしまうというリスクはだいぶ軽減されてきます。一方で、「子どもだから日本語を耳で聞けばすぐに覚える」という可能性はどんどん小さくなっていきます。

 

 もし、お子さんの学校で日本語教育の特別な支援が無く、通訳サポートのみだったり、まったく何の支援も受けられない場合は、できる限り早い段階で日本語学習をサポートする団体へ連絡をとり、日本語学習をスタートできるようにしてください。思春期の大切な時期に、日本語ができない状況で学校で過ごす一日は、お子さんによってはとても苦しく長く感じられます。

 

 特に中学生のお子さんの場合、「高校入試」が待ち受けており、地域や状況によっては日本語ができない生徒に対しての配慮がない、あるいは受けられない場合もありますので、早めにサポート団体などを通じて情報を入手するようにしてください。

 

 もし、お住まいの地域やアクセスが可能なエリアにサポート団体がないときや、サポートがあっても利用が難しい場合は、私たちYSCグローバル・スクールにご連絡ください。利用可能なサポート団体をご紹介したり、ITを活用し、離れた地域でも受けられる専門家による支援についてご案内することができます。

 

せっかく縁があり、共に暮らす事になったお子さんとご家族の新たな一歩を、私たちサポート団体も心から応援しています!