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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

外国にルーツを持つ子どもの高校・大学進学率が、日本人の半分である現状を変えたい。

高校進学率50%、中退率15%、大学進学率20%の壁

現在のところ、外国にルーツを持つ子どもの教育課題における大きな壁の一つが高校進学であることは、このブログでもたびたび発信しています。

(過去記事)

 

ikitanaka.hatenablog.com

 

出身国やルーツによっては50%前後とも言われる高校進学の壁の次に待ち受けるのは、高校卒業の壁。中退率の高さは現場で支援してきただけでも18%。改善傾向にあるとは言え、入ったけれども続かない、続けられないと言う子どもの多さに支援者としての歯がゆさを感じています。(全国的な高校在学率は国勢調査を基にしたこちらの論文p54、図8-1他で知る事ができます。だいたい、15%前後。)

 

それでも、数少ないけれど高校を無事に卒業し、次の進路を目指す若者達も登場し、一縷の希望を感じる事も増えてきました。ただ、「高校進学→高校卒業→専門学校または大学進学」までたどり着くためには、本人の学ぶ意欲と努力だけでは不十分である事も感じています。

 

日本の子どもたちの6人に1人が貧困と言われる現在。

日本国内で教育を受けてきた外国にルーツを持つ子どもたちも例外ではありません。こちらの記事などでまとめたとおり、外国人保護者の経済的状況は全体的に厳しいのが現状です。

 

来日

日本語がわからない

小中学校の勉強についていけない

高校進学率50%

高校中退率15%。

 

ここまで、これだけのハードルを越えて高校を卒業しても、その先の教育を受けるためには大きな壁が立ちはだかっていて、現場で見ている限りでは、率直に言って外国にルーツを持つ子どもたちが「高校を卒業して大学に行く自分」を描く前に、進学という選択肢をはなから外してしまっているようにすら見えます。

 

f:id:ikitanaka:20160511120401p:plain

 

この図は、たびたびご紹介させていただいている「2010年国勢調査にみる外国人の教育
――外国人青少年の家庭背景・進学・結婚――」
岡山大学大学院、高谷先生らの論文からの抜粋で、左側は「5年前に日本にいた者」(つまり、18歳であれば13歳には日本にいて、本の中学校に通学した外国にルーツを持つ子どもで、留学生ではない)の大学・大学院在籍率を示しています。

 

19歳の若者たちを見てみると、日本(JP)・韓国(KR)・中国(CH)の場合の在学率が40%~50%の間にある一方で、ブラジル(BR)、フィリピン(PH)、ペルー(PE)国籍の若者は20%の壁を越える事ができていません。

 

中国にルーツを持つ子どもたちは比較的日本語を習得しやすいことや、経済的に安定している層が一定数存在する事。韓国籍の場合は在日の方々などが含まれていることなどが、日本人と変わらない進学率の高さにある程度影響しているのではないかと見られる一方で、ブラジルやフィリピン、ペルーの若者たちは高校卒業というハードルを越えて尚、この進学率であることを考えると、経済的な状況も大きく影響しているのではないかと思われます。

(調査実施の2010年は第1世代の子どもたちがようやく進学年齢前後に到達している時期で、支援者にとっても「未開の領域」であることも一つの要因と言えそうですが)

 

外国にルーツを持つ子どもは「留学生枠」が使えない

 

同じ外国籍であっても、留学生であれば、彼らに特化した奨学金制度などを有する私立大学や財団などもありますが、日本の公教育を受けてきた外国にルーツを持つ子どもはこの留学生向けの枠組みの要件にあてはまらないケースがほとんど。また、日本人向けの奨学金は日本語で情報を得るハードルに加え、返済の義務があるものが大半で、さらに経済的に追い込まれる可能性も否定できません。

 

給付型の奨学金ができれば、日本人か外国にルーツを持つかに関わらず、広く国内に暮らす子どもたちに進学の機会をひらける可能性が高まります。

 

今すぐに、できることがある

 

現在、インターネット上では「全ての子ども達に学ぶ機会を!」キャンペーン事務局が、この給付型奨学金制度の創設を求めたオンライン署名活動を行っています。

 

www.change.org

 

外国にルーツを持つ子どもたちも、給付型奨学金が実現すれば、高校卒業後の選択肢に「進学」という二文字を組み込む事ができるでしょう。

 

外国にルーツを持つ子どもたちは、バイリンガル、バイカルチャーと言ったグローバルに活躍できるポテンシャルを有しています。大学や専門学校で十分に学び、専門知識を身につけて日本社会に巣立って行く事になれば、きっとさまざまな場面で力となってくれる存在です。

 

オンライン署名は、日本に暮らすすべての子どもたちが国籍やルーツに関わらず、そして経済的な格差に左右される事なく、十分な教育を受ける事ができる環境実現への一歩であり、その一歩を推し進めることができるのは、私たち1人1人に他なりません。

 

子どもたちの未来のために、今できることをぜひ一緒に取り組んでいきましょう。