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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

外国にルーツを持つ子どもの高校進学率50%ー『不足』はどこに?

外国にルーツを持つ子ども・若者

私の所属する

NPO法人青少年自立援助センター

はもともと、ひきこもりの若者やニート状態にある若年無業者の方々の支援を専門としており、私が統括する定住外国人子弟支援事業部でも2013年度より、外国にルーツを持つ若者の自立・就労支援に取り組んでいます。

今回のエントリーでは、自立への入り口とも言える「高校進学」についてお話しします。

 

(写真:昨年度高校受験生クラスの様子。22名が受験し、全員が合格しました)

 

 

<本当はできるのに・・・>

 

外国にルーツを持つ子どもたちのうち、10代半ば以降に来日した子どもについては状況にもよりますが、出身国で礎教育を受け、母語アイデンティティがある程度確立された状態で日本にやってくることが多く、そういう点では、日本で生まれ育ったり、幼少期に来日した子ども達が抱えやすい「母語喪失」など言語発達に関連する困難はある程度回避されています。

 

ときに、出身国でとても優秀な成績を学業で修めた子どもたちに出会うこともありますが、彼らが、日本語という言語障壁によって本来発揮できる能力の半分以上を(一時的にせよ)喪失していると感じるときは、やるせない気持ちになります。

 

たとえば、14才で来日した外国にルーツを持つ子どもの場合、経済的にかなりの余裕がなければ、基本的には公立中学校の3年生に編入します。今まで出身国では勉強がよくできたほうであったのに、日本の中学校に入った途端に、ほとんど「勉強がわからない」状態に陥ってしまいます。

 

英語圏の子ども達であっても、英語の試験問題に書かれている日本語が理解できない、英文和訳ができない、など、「英語は理解できているのに、得点できない」という大きなジレンマに襲われます。

 

数学が得意だったお子さんも同様に、試験問題が読めないため得点につながらない。いわんや、国語や社会などの教科はその科目自体の得意不得意にかかわらず、0点から1ケタ台の点数になってしまうこともあり、こうした状況は、それがたとえ周囲がみて「日本語ができないから仕方ない」シチュエーションだったとしても、外国にルーツを持つ子どもたちから自信を奪っていきます。

 

 

<「高校進学の壁」の正体は・・・>

 

14才で来日した外国にルーツを持つ子どもの内、外国籍の子どもたちについては試験問題へのルビ振りや試験時間の延長・辞書の持ち込み(2016年度入学者より)など、一定の「配慮」を受けることができます。また、受け入れ枠はごくわずかであるものの、外国人枠を持つ都立高校も3校あり、来日3年未満の外国籍の子ども向けに特別な試験を行っています。

 

一方、同じ状況の日本国籍を持つ外国にルーツを持つ子どもについては、こうした配慮はありません。帰国子女受け入れ校はありますが、子ども達の多くが「帰国子女」の要件には当てはまりません。

 

こうしたケースの場合は、日本語の力が不十分であれば定時制高校への進学が「現実的」なラインとなりますが、学校現場も当事者や外国人保護者も、時には支援者自体が適切な情報を持っておらず、誤った進路指導のため「進路未決定」として社会に放り出されてしまう場合も残念ながら少なくありません。

 

結果として、地域差はありますが外国にルーツを持つ子どもの高校進学率は50%前後にとどまっている状況です。

 

一方で、私たちのような支援機関が介入することで、子ども達の高校進学率は97~8%台にまで飛躍的に向上します。これは、「不足」が子ども達や外国人保護者自身ではなく、かれらをとりまく『環境』にあることを意味しています。

 

 

<『不足』はどちらに?>

 

『外国にルーツを持つ子どもたちの現状と課題』を考えるとき、それらは

 

・日本語ができない
・学校の勉強が理解できない
・日本社会のルールやマナーを理解できない
・地域にかかわろうとしない(外国人だけで固まっている)

 

など、当事者やその家族の『不足』が言及されることも少なくないですが、それは事実である反面、その『不足』を生み出しているのは日本社会という環境であるということもまた、ひとつの事実です。

 

もし子ども達が、日本語を来日直後から専門家とともに学べていたら?

もし子ども達が、経済的な状況にかかわらず公立、私立と自由に進学先を選べていたら?
もし子ども達やその保護者に、彼らが理解できる言語で様々な情報が十分に提供されていたら?

もし子ども達やその保護者に、「いっしょに」と声をかけることができたら?

 

など、たくさんの「もしこうだったら」が日本社会の中にあふれています。
もしそうだったら、きっと、外国にルーツを持つ子ども達は1人1人が持つ能力を十分に発揮して、のびやかに大人へと成長し、日本の社会が多様で豊かな社会となるよう力を貸してくれるのではないでしょうか。

 

子ども達が「日本に来てよかった」「日本だったからこそ成長できた」と感じることができる社会にしてゆくことが、未来の日本を創る貴重な一歩になるのではないでしょうか。