NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/ 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援事業運営を担当。Yahoo!ニュース個人オーサー。2児の母。

【よくある質問:その2】外国にルーツを持つ子どもは、なぜ日本に来たんですか?

(Q)外国にルーツを持つ子どもは、なぜ日本に来たんですか?

 

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(A)「日本に来た」理由は様々ですし、日本で生まれた子ども達もいます。

それぞれ個別の事情がありますが、大まかなパターンに大別してご紹介します。

 

【呼び寄せ】で来日した子ども

支援現場で出会う、少なくない外国にルーツを持つ子ども達がこの「呼び寄せ」と呼ばれるパターンに当てはまります。

 <呼び寄せとは>

・外国人の親御さんが、子どもを出産後に出身国に暮らす親戚の元に預けて来日

 (日本で出産した子どもだけを、乳幼児期に母国に”送り返す”ことも)

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・日本での生活基盤が確立された後、子どもの教育の節目(小学校卒業、中学校相当修了、など)やビザが出たタイミングなどで子どもを来日させる

こうして呼び寄せられた子ども達は、日本で実の親と何年ぶりかに同居すること、日本語がほとんど(あるいは全く)わからない状態で来日し、日本の公立学校に就学・転入することになる、という点が概ね共通しています。

中には、実の母親と1才になるかならないかで国をまたいで別居となり、十数年ぶりに共に暮らす、という子どもも。離れて暮らしている間の様子や子どもの成長が完全には把握できない親御さんもいて、お互いに戸惑い、手探りの状態になる家庭もあります。

また、実母が離婚し、日本人男性と再婚→再婚相手との間に、子どもにとっては父親違いの兄弟がいることもあり、その「新しく築かれた家庭」に呼び寄せられた子が同居することも珍しくなく、「家族”再”統合」の課題も、もっと着目されるべきだと感じています。

 

【日本で生まれ育った子ども】

外国にルーツを持つ子ども達の全員が、「新たに来日した」わけではなく、日本人と外国人の国際結婚のカップルや、外国人のご両親が日本で生計を立てており、日本国内で生まれた子ども達も少なくありません。

厚生労働省の人口動態統計によると、国内で生まれる赤ちゃんのうち、30人に1人は父母または父、母のいずれかが外国人の親であることがわかります。

こうした子ども達の多くが、日本語の日常会話に不自由せず、日本語を第1言語(または母語)として育ちますが、家庭の中で何語が使われているかや、周囲の支援環境などによっては、学校の授業で使われるような難しい日本語が理解できなかったり、親の言葉(母語)がわからなくなり、親子間で使える共通言語がなくコミュニケーションが十分にとれない状況に陥ることもあります。

 また、小さな頃から見た目や自らのルーツによって「いじめ」「差別」「偏見」にさらされて育った子ども達も多数おり、「日本で生まれ育ったのに。日本語しかわからないのに、いつまでたっても日本人の仲間には入れてもらえない」と感じています。

 

【移動を繰り返している子ども】

外国にルーツを持つ子ども達の中で、難しい状況に陥りやすいのが、日本と外国を行ったりきたり、移動を繰り返している子どもたちです。

たとえば、小学生時代に呼び寄せられたものの、前述の「家族再統合」が上手くいかなかったり、日本語がわからず日本の学校不登校状態に陥ってしまったりなどの理由から出身国へ「帰国」したものの、帰国後はやはりお父さんやお母さんと共に暮らしたくて日本に再来日し、それでもやっぱり日本語の壁から学校に通えなくて再帰国・・・という子どもがいます。

別の子どもは、外国人保護者が派遣などで日本に仕事があるときに共に来日し、雇い止めで仕事を失って帰国。再度、日本の仕事が見つかり再来日・・・という状況を繰り返し、日本の学校でも、母国の学校でも十分に学ぶ機会が持てませんでした。

こうした移動を繰り返す子ども達は、どこの国でも落ち着いて学校で学ぶこともできず、どの国の言葉も年齢相応には伸びず・・・という状況に陥り易く、学力も語学力もないという行き詰った状態で出会うことも少なくありません。

 

全ての子ども達のために・・・

子ども達がいつ、どのように日本に来たとしても、あるいは日本で生まれたとしても、子どもの権利として保障されているように、十分な教育機会と、安心して過ごせる環境が必要です。

それはすぐ近い将来にリターンが得られる、社会的に重要な投資でもあります。

 日本で生まれ育った肌の色の違う(だけの)子どもに向かって、「国へ帰れ」と罵ってしまう子ども達が、グローバル化の時代に取り残されないためにも。多様性を豊かさの源泉とするためにも。

私たち大人が、今すべきことはたくさんあります。

 

【外国にルーツを持つ子ども達に、専門家による教育支援機会を届けます!】
YSCグローバル・スクールに通う子ども達、年間約100名の内25%~30%の子ども達が困窮・外国人ひとり親世帯に暮らす子ども達です。こうした子ども達に、質の高い、十分な量の日本語教育機会を届けるためにYSCグローバル・スクール内部奨学金を、一般の方々のご寄付により運営しています。
 
また、住んでいる自治体によっては予算や人材不足などから、日本語教育機会がまったくない子ども達もいます。こうした子ども達のために、2016年度からオンラインを活用したプロジェクトも運営しています。
 
地域格差や経済格差で子ども達の学びが制限されることのないよう、ぜひみなさんのお力をお貸しください。
 
 
◆YSCグローバル・スクールは、”GARDEN Journalism"様より、情報発信をご支援いただいています。主宰者である、ジャーナリスト堀潤さん取材の取材・動画ルポは【こちら】よりご覧いただけます。