NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/ 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援事業運営を担当。Yahoo!ニュース個人オーサー。2児の母。

2016年参院選各党マニフェストに見る外国人・移民関連政策

参院選2016はこんな視点での比較も

東海地方に拠点を置く、多文化共生NPOの中間支援組織、NPO法人多文化共生リソースセンター東海さんが、7月10日に行われる参議院選挙に関連し、各政党が「移民」や「外国人」についてどう考えているのか、政策集の比較をしてくださったのでご紹介します。

 

多文化共生リソースセンター東海さんのブログエントリーより抜粋

「移民」「外国人」についての記載あり(*五十音順)


幸福実現党
移民受け入れに向けた制度設計を行います。(p.35)
・ 総枠での受け入れ数を定めるとともに、国籍別の受け入れ枠を設けることで、特定国への偏重や反日国からの移民を制限します。
・国籍取得時には日本国への忠誠を条件とするなど、日本国民としての自覚・誇りを持つよう促します。
政治や経済、文化など各分野で、世界を牽引し得る新たな日本モデルをつくり、さらなる発展を目指します。 (p.47)
少子化対策と併せて移民政策を進め、当面は人口1億5千万人を目標とし、将来的には3億人国家を目指します。

公明党
7 教育の充実と学校環境の整備促進 (p.11)
・学生がグローバルな環境で学べるよう、海外留学への経済的支援の拡充、大学の国際化への支援、留学生の受け入れ増加や留学生との交流を強力に推進します。
9 人権、性的マイノリティーの支援 (p.12)
急増する難民申請者問題に対応するため難民認定制度を適正化するとともに、認定難民及び人道的配慮等で保護された外国人への日本語支援等、公的支援を強 化します。
ヘイトスピーチなど、本邦の域外にある国または地 域の出身であることを理由として行われる不当な差別的言動を解消するため、人権教育及び人権啓発等の取り組みを強化します。

社会民主党
人権 (p.6)
・差別や敵意を煽る「ヘイトスピーチ」の根絶に向けて全力で取り組みます。

自由民主党
2020年東京オリンピックパラリンピック (p.18)
・2020年東京大会及び地方の観光地における外国人への対応に向けて、「言葉の壁」をなくす多言語音声翻訳の普及を図ります。
雇用と所得の拡大 (p.23)
労働力人口が減少し、現行制度でも外国人労働者の大幅な増加が見込まれる中で、日本人だけでは労働力が不足し社会に深刻な悪影響が生じる分野について、外国人労働者が適切に働ける制度を整備します。

新党改革
ヘイトスピーチ (p.14)
・特定の人種や民族を標的に差別をあおるヘイ トスピーチの解消のための対策法が6月3日に施行されました。
本邦外出身者の方々を侮辱し、日本で安心して生活することを阻むような言動を、社会として許してはいけません。罰則規定をどのように定めるかの議論を続けるとともに、ヘイ トスピーチに対する社会としての毅然とした態度を示していく必要があります。
海外留学の倍増、外国人留学生の受け入れ促進 (p.17)
・日本の若者の海外留学熱は一時に比べ大きく下がっています。2004 年に 8.3 万人だった日本人留学生の数は、2013 年には 6 万人に減っています。他方、海外に在留する邦人が年々増加の一途をたどっているように、世界との距離が近くなり、日本一国だけでは物事を考えられなくなっている時代に入っています。
・この社会の大きな流れに乗り遅れないため、日本の若者の海外留学生を倍増させるとともに、優秀な外国人留学生の受け入れを増やし、日本を内向きから外向きの国家に変えていくきっかけとします。
・海外の若者や他の方々が、インターネットで日本語の語学力を身につけてもらえるように、「サイバー N1(エヌワン)教育」なども検討していきます。

日本共産党
言論・表現の自由を守ります。ヘ イトスピーチを根絶します (p.15)
・民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶し ます。超党派で成立させた「ヘイトスピーチ解消法」も活用して、政府が断固たる立場にたつことを求めます。
*ホームページに「48 ヘイトスピーチ」「49 在日外国人」について詳細記載あり

日本のこころを大切にする党
我が党は、日本各地で、国際文化交流の祭典を催し、日本が、世界の文化が輝き、溢れ、交流する場となることを目指す。
・日本各地で、国際文化交流の祭典を催し、地方創生に資する。
・文化による国際貢献、「世界の文化が輝き溢れ、交流する場」の実現

民進党
国民の自由と 人権を守る (p.19)
・多様な価値観と少数者の人権を尊重する社会をつくります。
・ヘイト・スピーチ対策法を発展させ、人種、民族、出身などを理由とした差別を禁止する法律をつくりま す。


特に記載見つからず(*五十音順)
◆おおさか維新の会
国民怒りの声
生活の党と山本太郎となかまたち
◆日本を元気にする会
 

 

<上記抜粋の元記事「参院選2016」はこちら>

http://blog.canpan.info/mrc-t/archive/425#BlogEntryExtend

 

元記事の方には、各政党名のところにリンクが貼られていて、政策集にジャンプすることができます。 

まとめ作業大変だったろうと思いますが、とても参考になりますね。感謝。

 

このエントリーの転載を、多文化共生リソースセンター東海の代表理事である土井佳彦さんにお願いしたところ、ご快諾いただきました。重ねて感謝。

 

すぐに解決!だけが手段じゃない

 

私は個人的には、投票行動前の政治参加に関連するアクセシビリティを高めたほうが良いと思っていて、そういう意味で、政策集なども「やさしい日本語訳」などがあると、子どもの有権者教育にもなるし、日本語を母語としない有権者や識字の力が十分でない方々への情報提供機会を広げることにもなるかな、と思っています。

 

たとえば、今回私がざっと見た限りでは、公明党だけが、(おそらく)子ども向けのマニフェストを別に作成していて、文字も大きく、やさしい日本語の表現で、ルビも振ってあってわかりやすいんです。

www.komei.or.jp

(だからと言って、公明党を推したり、その他の政党を批判しているわけではありません)

 

こういう方向性で、身近にできることからすぐに取り組めたらいいなーという話しを土井さんにしたときに、彼が言ったのは

「翻訳とかってゆー“手段”の前に、有権者には日本語が読めない人や読みづらい人(ディスクレシア等)もいるんだってことの認識が大事ですよね。数を問題にせず、民主主義の中で権利が守られてない人の存在を世に問いたい」

(土井さんとのメッセージのやり取りから抜粋)

 という事でした。

 

彼のスタンスは、

「たしかにソリューション大事なんですが、この手の話題の場合、ソリューションの是非・可否に注目されるのはヤなんですよね。そこじゃないだろ、って思っちゃう。むしろ、課題を共有・共感してもらって、じゃあどーしたらいーの?ってのは各自に考えてほしい」

(同上)

というもので、すぐになんでもかんでも(?)解決したがる私とは異なり、じっくり民主主義を育てていきたいんだな、という想いが伝わってきました。

 

どの候補や政党を選ぶか、ということに目が行きがちですが、どのような選挙にするのか、を考えることも、私たち主権者の重要な役割で、特に権利を行使できない状況にある方々、権利自体を有さない外国籍の方々、子どもたちなど、彼らの存在を票を投じることができる有権者のひとりとしてどのように、自らの一票に託していくか。

 

そんなことも、長期・短期のいずれの視点でも考えていきたいな、と思っています。

 

「みんなにやさしい選挙」について、みなさんと考えるきっかけになれば、と、Yahooニュースで記事を公開しました。よろしければ、こちらもぜひ。

bylines.news.yahoo.co.jp