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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

善人の沈黙こそが、恐怖―『「差別はいけない」という当たり前の事』を当たり前にできるようになりたい

ヘイトスピーチ」という言葉を知っていますか?

 

2013年の流行語大賞トップテンにもランクインしたこの言葉。聞いたことがあるでしょうか?「ヘイト」というのは、もともとは「憎しみ」という意味で、ヘイトスピーチはおおむね「特定の人種、民族、宗教など、少数の人たちに対して、暴力や差別をあおったり、おとしめたりするような、侮蔑的(ぶべつてき)な表現のこと」と定義されています。

ここ数年で、東京や大阪などを中心に、韓国・朝鮮や中国にルーツを持つ人々を対象としたヘイト・デモ活動が活発になったり、インターネット上でも、こうした人々などに対するヘイトスピーチが広がっていることが問題となっています。こうしたデモ活動の様子は動画サイトなどで見ることもでき、耳をふさぎたくなるような言葉(「殺せ」「ゴキブリ○○人」など)を人々が叫ぶ様子が映し出されています。

 

「ヘイト」に対抗する「カウンター」行動

 

こうしたヘイトスピーチやデモに対する抗議行動も活発化し、「カウンター・アクション(行動)」と呼ばれ、ヘイト・デモが予定されている同じ日に同じ場所で横断幕やプラカードを掲げたり、ヘイト・デモを行う人々に対して差別的言動を止めるよう呼びかけたりなどのアクションを起こしています。

 

こうしたヘイト・スピーチやそれに対するカウンター行動は、直接デモを見たことがない方であっても、Twiiterなどで日常的に目にすることが増えています。

 

正直に言うと、「ヘイト」も「カウンター」も、どちらも罵詈雑言の応酬に見える

 

私は外国にルーツを持つ子どもの支援をする立場の人間であり、かつ、(うっすらとながら)海外にルーツを持っていることもあり、ヘイト・スピーチや人種差別的言動は到底容認できないと考えていますが、同様に、身近なところで見聞きするカウンター側の行動も、私自身のスタンスとは離れていることもあり、自らがそこに身を投じることは難しい、とも思っています。

 

正直に言うと、Twitterなどでいわゆる「ネトウヨ」アカウントのツイートに対して、反対の声をあげるアカウントの人々の言葉も、往々にして「聞くに堪えない」ことが多く、「違いがわからないな」と思うこともあったりします。

 

でも、何もせずにはいられない

 

だからと言って、ヘイト・スピーチを野放しにするような社会であってはいけない、と思う・・・。そんなモヤモヤした思いを持ちながら、具体的に何ができるのかを考える日々が長く続きました。

 

今でも、「罵り合い」でない手段で、人種差別のない社会を目指す上で、自分のような「争うことが苦手」な人間ができることを探し続けています。

 

 

そんな中で、出会ったヒント

 

先日、私たちのクラウドファンディングをサポートしてくださった支援者の方と直接お会いする機会を得ました。その方は「銀座 No! Hate小店」という名称で、いわゆる「カウンター」とは少し異なるスタンスでヘイト・スピーチに対する反対活動をしている方でした。

 

活動名称にあるとおり、東京の銀座の街で行われるヘイトを目の当たりにし、幼い頃からご本人にとってなじみのあった銀座の街で、ヘイトがあることを許すことができない、と感じた素直な気持ちを原動力として、2016年の春に始まった活動です。


一方で、活動開始後、銀座の街の人々と話しをしてまわると、ヘイト・デモもカウンター・デモも同じように良く思われていないことが明らかとなり、「街の人が引いている」ことに気づいたと言います。

 

そこで、銀座 No! Hate小店では、ヘイトスピーチとは何か、なぜ野放しにしておいてはいけないのか、などを伝える基礎講座を開催することで、「(ヘイトは嫌だけど)カウンターもちょっと・・・」と考えている、”銀座という街が好きな人々”が、落ち着いて学ぶ機会を提供してきました。

 

「私たちは「従来のハードなカウンター」に心から尊敬の念を持っています。彼らが意識的に汚れ仕事をやってくれたからこそ社会問題として可視化され、ヘイトの垂れ流しが抑止されてきたと感謝しています。 」

と銀座No! Hate小店の方々はおっしゃいます。

「小店の活動はそれぞれの得意分野を生かした分業であり、広い意味で(「従来のハードなカウンター」との)協働と捉えております」()内は筆者加筆

 

同じ方向を向きながらも、違う分野で活動する。そんな協働のあり方に、私自身、強く賛同しました。

 

今回、初めて小店の方々とお会いすることで、「いわゆる「カウンター活動」ではない方法で、ヘイトスピーチに対抗する」そんなやり方もあるのだ、という事自体が新鮮な発見となり、また、、自分自身ができること、のヒントを見出すことができた貴重な機会をいただきました。

 

『「差別はいけない」という当たり前のこと』を発信する銀座であることを願って・・・

 

銀座 No! Hate小店の方とお会いして最も印象的だったのは、「当たり前のことを当たり前に言う」、という、これまた当たり前の姿でした。この当たり前が今、最も難しい時代を迎えていることもまた、あらためて思い知らされました。

 

ー善人の沈黙こそが、恐怖。

最大の悲劇は、悪人の暴力ではなく、善人の沈黙である。

The ultimate tragedy is not the oppression and cruelty by the bad people 

but the silence over that by the good people.

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師

 

去る、2017年1月16日は米国では「キング牧師の日」という祝日となっています。毎年、キング牧師の誕生日である1月15日に近い、1月の第3月曜日を、彼の功績を称える式典が行われたり、人種差別について学び、考えるイベントなどが開催されたりしています。

私たち1人1人が、日本国内で起きている人種差別やヘイトスピーチの現状を学び、No!という意志を示すこと。あらためてその重要性が高まっているなと思う一日でした。

 

「銀座No!Hate小店」では、第2回反ヘイトスピーチ基礎講座を来月、2月19日に銀座にて開催される予定です。

銀座が好き!という方、ヘイトスピーチって何?という方など、この機会にぜひ。

詳細はこちらからどうぞ。