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NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/NPO法人多文化共生子ども・若者プラットフォーム理事長。 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援を担当。7歳と3歳の2児を育てるフルタイムワーキングマザー。

家庭内公用語は日本語-外国にルーツを持つ“あたらしい”家族

外国にルーツを持つ子ども・若者

<現場での”トレンド”に変化が>

 

これまでにつらつらと外国にルーツを持つ子どもたちのことを書いてきましたが、おおむねその前提となっていたのは「両親とも同国出身外国人の子ども」または「外国人と日本人の両親を持つ(いわゆるハーフの)子ども」のいずれかであることでした。

 

家庭の経済状況や日本語の習得状況や母語状況、学校への通学状況等に係わらず、私たちの現場で出会うほとんどの子どもたちは外国の同国出身者同士父母またはどちらかが日本人のカップルの間に生まれています。おそらく、全国のほとんどの支援者の方々が出会う子どもたちの大半も、同じなのではないかと思います。

 

しかし昨年度、これまでの現場の“トレンド”に少し変化が見られました。
それは、複数「異なる外国出身の父親と母親との間に生まれた外国にルーツを持つ子どもたち」との出会いでした。

 

 

 

 

<父、母、子どもの第1言語がそれぞれ異なる家族>


たとえばタイ出身の母親とブラジル出身の父親が日本で出会い、家庭を築き、その間に生まれた子ども、のように父親の第1言語(母語)と母親の第1言語(母語)異なる上、いずれも日本語ではないケースです。

 

どの国とどの国のカップルが多い、などの傾向を見て取れるほどではありませんが、それでも1組、2組ではありません。

 

そしてこれらの夫婦、親子、家族間の“公用語”に日本語(英語のケースも)が用いられていて、その子どもたちが話せる言葉は母語でも父語でもない日本語のみ、という状況。現場にとっては“あたらしい”外国にルーツを持つ子どもたち、でした。

こうした子どもたちの多くが、以前から言及しているシングルリミテッドの状況に陥るかどうか、まだ事例数が少ないためなんとも言えませんが、その可能性は高いと言えそうで、引き続きサポートを行っています。

 

 

<愛が言葉を越えないこともあるかもしれないから・・・>

 

現場でもお互いの母語が日本語ではなく、かつ異なるルーツを持っている女子と男子が付き合い始めて、その共通言語が「日本語」、というカップルの噂を耳にすることが多くなりました。こうした若者らがこれから結婚し、家庭を築いて出産をしたら、その家庭の中の“公用語”は日本語になるでしょうし、子育ても日本語で行われることになるでしょう。

 

これまでは「母語」と「日本語」の2言語のみがあって、それぞれがどの程度発達するか/させることができるか、のようなケースが主たる前提となっていましたが、今後はより多様で複雑な言語・文化的バックグラウンドを有する子どもたちとの出会いが増えるのではないかと思っています。

 

それが今すぐに切り分けるべき特別な課題であるかどうかはわかりませんが、シングルリミテッドの子どもたちと同様に、「唯一の言葉が日本語」という子どもたち、そして子どもとのコミュニケーションは外国語である日本語を介してしか取ることができない外国出身の親御さんたちにとって、『日本語を身につける』ことの重要性、必然性が高いケースといえます。

 

 

<人の営みのダイナミズムを小さな現場で感じています>

 

こうした状況を目の当たりにすると、この小さな現場の中につまっている多様性や国際性にあらためて驚きます。そして日本の中の国際化が、“(ネイティブ)日本人”が介在しないカタチであっても深化してゆき、世代を継承していることに、私は個人的に喜びに近い感情を持っています。

 

人はどこにでも生まれ、成長し、恋をして家族を築き、命をつなぐのだな、と、人の営みのダイナミズムのようなものに触れている気分です。

 

“日本語ネイティブ”の定義も今後、変化していきそうですね。