NPO法人青少年自立援助センター/YSCグローバル・スクール/田中宝紀 (IKI TANAKA)

NPO法人青少年自立援助センター定住外国人子弟支援事業部統括コーディネーター/ 東京都福生市にて外国にルーツを持つ子どもと若者のための教育・自立就労支援事業運営を担当。Yahoo!ニュース個人オーサー。2児の母。

日本語が話せない児童生徒が増加。国が対策へ

国が対策に乗り出した!?

www.fnn-news.com

 

一昨日のFNN-NEWSの動画が流れてきました。ニュースの切り口やいくつかの点に若干の疑問は残るものの、最近、こうした外国にルーツを持つ子ども関連のニュースを目にすることが増えたなと思います。時期的なものですね。

 

さて、学校における外国にルーツを持つ子どもと言えば、去る2015年11月5日、文部科学省において学校で外国人児童生徒の教育をどう支えていくかを考える有識者会議が開催され、議事録と関連資料が公開されました。

学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議(平成27年11月5日~)(第1回) 議事録:文部科学省

 

この会議は、以下のような日本語を母語としない子どもたちの課題について検討することを目的に開催されたものです。

 

1.学校における外国人児童生徒等に対する日本語指導体制の整備・充実

(検討課題例)
・散在・集住地域などの多様なニーズに応じた「拠点校」の整備の在り方
・拠点校を中心とした広域連携、幼・小・中・高連携、社会教育関連部署・NPO・企業等との連携等のネットワーク構築の在り方

2.日本語指導に携わる教員・支援員等の養成・確保

(検討課題例)
・日本語指導に必要な教員、支援員、母語による支援員等役割及び配置の在り方
・日本語指導に関する教員・支援員の専門性向上のための方策(養成、研修等の在り方)

3.日本語指導における指導内容の改善・充実

(検討課題例)
・学校教育におけるJSL(第2言語としての日本語)カリキュラム及び外国人児童生徒のためのDLA(対話型アセスメント)の普及・促進方策
・「特別の教育課程」の導入を踏まえた今後の指導の在り方
・日本語指導のための教材の在り方

4.外国人の子供の就学の促進及び進学・就職への対応

(検討課題例)
・就学前段階からのきめ細かな就学相談の在り方
・外国人児童生徒等の保護者への対応に関するサポート体制の在り方
・学齢超過者の就学希望への対応の在り方
・外国人生徒の高校進学の促進方策(外国人生徒等への「特別枠」等)
・外国人生徒の就学促進や就学支援にあたっての企業等との連携の在り方

これまで日本語を母語としない子どもたちに関わる研究者や現場の支援者が声を上げてきた課題の大枠がある程度列挙されていて、この1つ1つの課題にどう対応していくのかが方向付けられていくのだとしたら、外国にルーツを持つ子どもたちの教育は大きな一歩を踏み出すこととなりそうです。

議事録ではさらに現場の状況を踏まえた細やかな議論が展開され、「あるある。そうそう」とうなずくことも多くありました。

 

どうして公教育で「外国人の子」に日本語を学ばせるのか?

 


FNNのニュースのタイトルにも、有識者会議で文科省から提出された資料にもありましたが、日本語指導が必要な児童生徒は10年前と比較して1割以上増えているんです。

日本語がわからない子どもたちが、そのまま学級内で「放置」のような状況になってしまっている学校も少なくなく、何とかしてあげたいけれどどうしたらいいかわからない・・・と困っている先生方もたくさんおられます。

日本語がぜんぜんわからない子どもは、日本の学校で苦労しそうだ

ということは比較的想像がつきやすいのではないでしょうか。
もし自分が子どもで、いきなりアラビア語圏の学校に転向することになったら・・・など、と想像するだけでも苦労の大きさがわかります。

 

f:id:ikitanaka:20151225111416p:plain【資料3-1】外国人児童生徒等に対する教育支援に関する基礎資料  (PDF:1325KB) より)PDF

 

では、なぜこうした子どもたちに公教育内で日本語を教える必要があるのでしょうか?

「外国人が勝手に連れてきた子どもを、どうして我々の税金で面倒見なくちゃいけないんだ!」

というお決まりのつぶやきが聞こえてきそうですが、ここ数年のトレンドとして顕著に増加しているのは、日本国籍を持つ「日本人の子ども」で、日本語指導が必要な児童生徒です。そして、たとえ外国籍であったとしても、「子どもの権利条約」に定められている通り、その学びは保障されなくてはなりません。

ユニセフのサイトに、子どもの権利条約について子ども向けにわかりやすく解説されていたページがありましたのでご紹介とリンクを貼っておきます。

 

第28条
教育を受ける権利

[image]子どもには教育を受ける権利があります。国はすべての子どもが小学校に行けるようにしなければなりません。さらに上の学校に進みたいときには、みんなにそのチャンスが与えられなければなりません。学校のきまりは、人はだれでも人間として大切にされるという考え方からはずれるものであってはなりません。

第29条
教育の目的

[image]教育は、子どもが自分のもっているよいところをどんどんのばしていくためのものです。教育によって、子どもが自分も他の人もみんな同じように大切にされるということや、みんなとなかよくすること、みんなの生きている地球の自然の大切さなどを学べるようにしなければなりません。

第30条
少数民族・先住民の子ども

[image]少数民族の子どもや、もとからその土地に住んでいる人びとの子どもが、その民族の文化や宗教、ことばをもつ権利を、大切にしなければなりません。

 

 

UNICEF「子どもと先生の広場」―子どもの権利条約ページより

 

 

そして近年の傾向は「デカセギからテイジュウへ」。外国にルーツを持つ方々の日本での定住志向は高まっています。下図の日本に暮らす外国人の在留資格内訳を見れば明らかな通り、永住者、特別永住者、定住者だけで56%を超えています。文字通り、永住・定住が可能な資格です。

 

f:id:ikitanaka:20151225112600p:plain

 

このブログでもしつこいくらいにお伝えしていますが、もはや、彼らは日本社会の一員であり、事実上の移民です。

 

そしてその子どもたちは日本で学び、自立し、日本社会へ巣立ってゆく。日本の未来を担う子どもたちです。こうした子どもたちに対し、日本語教育を提供しないまま放置した結果発生する状況は、当然のことながら日本社会が負う事になります。逆に、母語保持や日本語教育をしっかり支えていくことで、彼らはバイリンガル・バイカルチャーのポテンシャルを発揮し、新しい風をもたらします。


公教育内で日本語を母語としない子どもたちの日本語教育を、国家が責任を持って実施していくことは、日本社会の未来をより豊かにする社会的に重要な投資であり、日本人の子どもたちと同様に、大切にはぐくまれるべき存在です。

 

まずは何よりも、現状からの脱却を。

 

さて、話しは戻って有識者会議の議事録を拝見して、いくつかポイントを上げておきたいと思います。

  • 自治体にとって全体として取り組むべき課題であることに言及した一方で、ルーツの多様化や、散在と集住と言う両極の方向性が同時に強まっている等の環境変化で、各自治体での対応が難しくなってきていることを指摘し、現存する施策では不十分であることを認めていること。

    →できれば「全自治体の課題」ではなく「国の課題」としてもらいたかったところですが・・・
    →「外国人児童生徒の教育」に関わる課題に全体として対応すべき、という前提で文科省の方から言及があったのは姿勢の変化を感じました。

 

  • 現場を知る委員の方々が、いわゆる集住地域で活動されている方々で構成されていること

    →日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校は、その全体の過半数が、こうした児童生徒が1人しかいない、2人しかいない、という散在地域(さんざいちいき)の学校です。検討課題にも挙がっていますが、『多様なニーズに応じた「拠点校」の整備の在り方』を考えるために、散在地域で実際に活動し、対応されている支援者の方々の声も必要だろうと思います。(今後の会議に期待)

    →そして、散在地域に暮らす子どもたちの支援のあり方は「拠点校整備」以外の可能性も探っていくべき。テクノロジーを活用することで、技術的に解決し得る部分もありそう。

    いろいろな方向性を探っていかないと、結局は「拠点校まで保護者が送り迎えできないから日本語が学べない」と言った課題や、「担当者が各学校を巡回支援するので、週1回しか日本語が学べない」と言った課題などがでてきそうな予感がします。とにかく、現存の無支援地帯を1(いち)にすることが先決ですが。

    その他細かいこと、いろいろ挙げればキリがありませんが・・・「地域によりニーズが異なるので自治体でやるべき(なので、自治体が予算を組んで国は補助)」ではなく、大同小異、日本全体として子どもたちの学びをどう保障していくか、という大きな視点で一歩も二歩も、現状から歩き出してほしいと切に願います。

    (私もお呼びいただければ、いつでも現場の実態や数値をお届けします!)

 

*1

 

*1:2016年1月6日、子どもの権利条約に関する箇所を追記・修正しました。

外国人家事代行サービス特区解禁―外国人ベビーシッター利用経験から、思うことなど。

f:id:ikitanaka:20151217125720j:plain

 

以前から話題になっていましたが、家事代行サービスへの外国人労働者の受け入れが、国家戦略特区の神奈川県と大阪府で解禁されることになりました。

 

www.nishinippon.co.jp

 

いろいろと賛否両論あるニュースですね。

そもそも家事代行サービス自体も、まだ一般に浸透しているものではなく、料金の高さや、後ろめたさなど、実際に利用するまでのハードルが高いものだな、と感じています。一方で、経産省は、家事代行関連サービス市場は将来的に6,000億円程度の市場規模となる、と推計しています。また、以前と比較して、働きたい・働き続けたい、という女性自身の声の高まりや、女性の”活躍”を推進しようとする政府の戦略などもあいまって、おそらく一定の需要は開けてくるものなのだろうと思っています。

 

でも、やっぱり「知らない他人を自宅に上げる」うえ、自分たちが汚した部屋や洗濯物をきれいにしてもらう、ってこと心理的に抵抗あるよなーと思います。

まして日本語が通じない外国人の方となると、「いったいどうなるの!?」「うちは外国語ができないし、無理」と感じる方も少なくないかもしれません。

 

 <私の外国人ベビーシッター体験>

実は私は個人的に、外国人の方にベビーシッターをお願いしたことがあります。現在小学1年生の私の長男が生まれて間もない頃、事情があって産後すぐに仕事をしなくてはならない環境にあり、長男を保育園に入れるまでの3ヶ月程度、子守をしてくださる方を探しました。

 

たまたま知り合いのフィリピン人の女性が引き受けてくれる同郷出身の友人がいるということで、その他に名乗り出て下さった日本人を含む数名の方との面接を経て、感覚的に「しっくりきた」フィリピン出身の「フジモトさん(仮)」にお願いをすることにしました。

 

フジモトさんは週3日、9時から夕方の4時まで私の住んでいるアパートにやってきて、3ヶ月間、私の息子の世話をしてくれました。彼女はフィリピン出身の40代の女性で、わが子をフィリピンに残して来日し、日本人男性と再婚して、私の住む地域から電車で20分ほどのところに暮らしていました。フジモトさんは「日本人の配偶者等」という在留資格で滞在し、日本での就労に制限はありません。

(子守をして下さった時間分は、謝礼をお渡ししています。謝礼は、その当時の最低賃金より少し高いくらいの金額でフジモトさんと合意し、内容は書面にまとめました。)

 

<フジモトさんのお仕事の流れ>

フィリピンにいた頃は、「ヤヤ」と呼ばれる乳母の仕事を、比較的豊かな家庭に雇われてしていたことがあるということで、ご自身の子育て経験を含め、子どもの扱いに不安を感じることはありませんでした。

 

ただ日本式の子育ては経験したことがない、ということで、ミルクの与え方やオムツ交換のタイミング、衣服の調整などについて日本ではこうする、ということは伝えました。

 

簡単な日本語の日常会話はダイジョウブ、というフジモトさんでしたが、きちんと理解してほしいことや、子どもの世話に関することは原則として英語とタガログ語(私はフィリピンに住んでいたことがあるので、英語と簡単なタガログ語は話せます・・・)で伝えました。

 

  • 朝→フジモトさんが来たら、まずその日の息子の睡眠のタイミングや授乳の間隔、体調(お散歩に連れて行ってもらうかどうかなども)を口頭で伝えつつ、メモとしてその場で(英語で)書いて残す。

  • 私外出→子どもの様子は、実際の授乳時間や排泄した時間、様子、睡眠などについて数字のみを記入すれば良いようにオリジナルの報告シートを日本語・英語併記で作成しておいて、毎回記入してもらう。

  • 帰宅後→報告シートを元に、その日の息子の様子を教えてもらい(大体ここで少し雑談したり、時々一緒にお茶をしたりして)、次回について確認をして勤務終了

 

という流れです。

 

<子守りだけじゃなかった!スーパー”ヤヤ”(乳母)>

フジモトさんと約束した仕事の範囲は「ベビーシッター」でしたが、生まれて数ヶ月の息子が「寝ている間、暇だから掃除や洗濯をしてもいいか」と彼女自ら申し出て下さり、申し訳ないな、と思いつつも正直かなり大変だったのでお願いすることにしました。

フジモトさんは、息子が寝ている間に手際よく食器を洗い、洗濯を干し、床を拭き上げ、トイレを磨いてくれました。時には私の携帯に電話をかけてきて「冷蔵庫にあるものを使って、夕飯を作ってもいいか」とまで・・・。私が帰宅したときには、毎日日本人のご主人のために作っているというおいしい和食や中華、時に私の大好きなフィリピン料理ができあがっている、というありがたい日々でした。

 

フィリピンでは、子どもの世話を「ヤヤ(乳母)」にお願いすることは珍しいことではありません。ヤヤは時に親戚であったり、知人を介して紹介された若い女の子だったり様々ですが、子どもの遊び相手から食事や排泄の世話、学校の送り迎えや簡単な家事まで担うことも。

また、ヤヤが不要な家庭でも、「カトゥロン」と呼ばれるヘルパーさん(家政婦)を住み込みか通いで雇って、料理などを含む家事をお願いすることも、一定の所得階層以上の家庭では当たり前に行われています。(» メイド暮らしのガイド | フィリピンプライマー

 

彼女は富裕層の家でヤヤをしていたこともあり、子どもの世話の仕方や遊び方、「雇い主=子どもの親」とのコミュニケーションも申し分なく、出過ぎることもなければ、引きすぎて仕事行儀になりすぎることもない(好き嫌いあると思いますが、個人的には、フジモトさんのこうしたスタンスのおかげで、気を遣わずにすみました)、完璧な仕事ぶりでした。

 

数ヵ月後、息子の保育園入園を機にベビーシッター終了となった頃にはお互いに涙を流して別れを惜しむくらいに、私にとって大切な存在となっていました。彼女なしには、第1子出産後のあの時期を乗り切ることはできなかったかもしれません。

 

<今、フジモトさん以外の誰かに家事をお願いできるだろうか>

 今、夫婦共にフルタイムの共働きで、2人の子育てに追われ、ハイテク家電(ルンバ、洗濯乾燥機、食洗機)をフル活用して日々を乗り越えていますが、やはり家事に費やす時間が圧倒的に足りず、家が散らかり、洗濯物が溜まって子どもがその日着ていく服がない、というような日は「またフジモトさん、来てくれないかな・・・」という気になることも少なくありません。

 

実際に、またお願いできないか聞いてみたこともあるのですが、すでにフジモトさんは工場のパートに出ており、頼むことができませんでした。また違う人を探して、フジモトさんのようなすばらしい方と出会える可能性はゼロではないですが、「ハズレ」た時のリスクを考えると、なかなか踏み込めていません。

(フィリピンに暮らしていた頃、私自身は家政婦さんをお願いしていませんでしたが、周りの日本人の方々と彼らの雇っていた家政婦さんとの間のトラブルは頻繁に耳にしました)

 

<語学じゃなくて、やっぱり相手との信頼関係が大切>

フジモトさんとの関係がうまくいったのは、やはりお互いのコミュニケーションの積み重ねによる信頼関係があったからこそだったなーと、今振り返って思います。

雑談を含めて、人柄を知ることができたことは、人見知りの私にとって安心材料となりました。英語もタガログ語もまったく話せない私の夫の場合は、直接彼女とコミュニケーションはとりませんでしたが、日本語・英語を併記した日々の報告シートや仕事の成果(掃除や食事)を見て、彼女に信頼を寄せていました。

 

個人的にベビーシッターとして子どもの面倒をみていただくにあたっては、大切なわが子をお願いするということもあり、事前に仕事内容をしっかり確認し、子育て方法での文化差による行き違いを防ぐための情報提供をし、日々の様子を確認するためにオリジナルのフォーマットを用意して、毎朝と帰宅後の情報交換をしっかりして、謝礼や経費は遅れずに払うなど、「お願いする側」としてやるべきことをしておいたことは、フジモトさんとの信頼関係を築く上でもとても有効だったと感じています。(ここは実際には派遣元の企業が担う部分ですね)

 

こうした利用者とサービス提供者間のコミュニケーションと信頼関係の構築を、外国人家事代行サービスの場合にどこまで派遣会社がサポートできるか、が定着のカギを握っているのではないかなー、と、短いながらフジモトさんとの関係を振り返って思っています。

 

家事代行サービスであれば、ベビーシッターと比べそれほど密なコミュニケーションはいらないかもしれませんが、いくら来日前に日本語や日本の文化について学んできたとは言え、日本と言う外国にやってきて言葉が十分には伝わらない環境で、不安を抱えながら働くこと、また、そうした人を自宅に上げて家事をしていただくことは双方にとってあまり楽しいことではありませんよね。

 

「この人なら大丈夫」と利用者側が思ってもらえるようなサポートだけでなく、家事代行サービスを提供することになる外国人の方々が、「この派遣会社なら大丈夫」「この会社から派遣された家庭なら安心」と思って働けることが大切なのではないかと感じています。

 

<「外国人だから」ではなく、「人だから」>

 

最後に一つ、気になっていること。

今、家事代行だけでなく、介護や農業などの分野で急速に外国人労働者の受入れが進んでいます。それが「研修生」であろうと「EPA」であろうと、そうでなかろうと、日本の社会のために汗を流して下さる方々は、外国人という「労働力」ではなくて共に地域で生活する1人の人間です。私たちの仲間です。生活があり、心があり、家族があり、楽しく幸せに、安心してより良く生きる権利を持っています。

 

また、一度受入を行う以上、彼らは日本社会で家族と共に暮らしたいと考え、子どもを呼び寄せ、その子どもたちが公教育を受けるくらいのことはしっかり前提として考えておかねばなりません。また、日本で誰かと出会い、恋をして新しい家族を築く若者もきっといるでしょう。人が働く、ということは「稼ぐ」以上に生活そのものであることを、日本社会全体が認識する必要があると感じています。

 

現在、日本は外国人の方々にとって「働きづらい国」として認識されつつあるようです。賃金も、開発途上国出身の方々にとってもかつてほど魅力としては映らない。日本が「外国人を受入れます。働いていいですよ」といくら門戸を開いたところで、彼らが喜んで日本で働きたい、と考えてくれるかどうかは今後の日本の努力しだいと言った状況です

 

日本で働いている、これから働くことになる外国にルーツを持つ方々が、「日本はいいよ」「働きやすいし、安心だよ」と心から言える環境の整備が、少子高齢化による人材不足にあえぐ日本にとって、重要となるのではないでしょうか。

 

 日本と言う国で生活することで、いろんな人がハッピーになれる。母国がそんな国になってくれたら、単純にいいね!って思います。

子ども・生活者向けおすすめ多言語学習支援サイト・生活情報アプリ

こんにちは。田中です。

私は時折、外国にルーツを持つ子どもたちや外国人保護者が使えそうな新作ツールが出ていないか、かなり時間をかけてネットで情報を探すようにしています。

今朝ひさびさにネットサーフィンしたら、すばらしい、お金がかからない無料のツール、多言語情報がいくつか出ていることを発見したので、ご紹介します。

 

<一歩先行く、当事者向けリーフレット>

まずは本当に支援者が「これを待っていた!」という情報を、多言語のリーフレットなどでさっと作成してくださっているのがかながわ国際交流財団さん。

こちらは2015年3月に公開されたものですが、外国人保護者と生徒を対象に、中学校生活を「充実させる」ためのポイントが、英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語の4言語、日本語併記で見やすく、わかりやすく、かわいく(これ大事!)まとめられたリーフレットです。

 

www.kifjp.org

 

ほかにも、新作(2015年10月)で

「外国人保護者・児童のための小学校で楽しく、安全に学ぶための10のポイント」

が公開されていました。こちらも英、中、ス、ポの4言語。外国人保護者向けに、小学校入学に向けての準備や日本の小学校の諸制度、相談先などがまとめられています。

 

(↑少しマニアックなポイントですが、これ、日本語が併記されているというところが秀逸。日本語が併記されていると、たとえば国際結婚の家族で父親が日本人のご家庭に配布し、家族内での情報共有をサポートすることができるなど、利便性が高まります)

 

かながわ国際交流財団さんのサイトにはほかにも、予防接種、保育園入園、防災、介護など、外国人保護者や生活者にとって関心の高いテーマに沿ったリーフレットがずらり。いつも「現場に、当事者にこれがあったらいい」を先駆的に取り上げてくださっています。

 

<特に中学生年齢で来日した子どもの学習に・・・>

続いては、宇都宮大学HANDSプロジェクトが運営する、外国につながる子どもを支援する方々のための情報交換サイト「だいじょうぶNET.」より。

 

www.djb.utsunomiya-u.ac.jp

 

この単語帳も本当に「これ、ほしかった!」と思える質の高いツールで、中学で習う数学、英語、地理、理科の教科書に頻出する単語を日本語からも、外国語(母語)からも引くことができ(ここが大事)、日本語を母語としない子どもたちが自分で使うことができるように設計されています。現在、サイト上でポルトガル語、スペイン語、フィリピン語、タイ語、中国語、ベトナム語の6言語が公開されています。

無料で。

 

こうした作業を、日本語を母語としない方々のために昼夜、こつこつとされている方々がおられるのだと思うと、本当に頭が下がります。感謝。

 

<「先進地域」三重県の多言語情報サイトの本気度がすごい!>

 

f:id:ikitanaka:20151208113338p:plain

http://www.mie.portalmie.com/ja/

 

三重県が多言語での生活・行政情報提供を目的に運営しているサイト、"Mie Info"はそのコンテンツの充実度と完成度の高さに驚き。文字だけでなく、動画もふんだんに使われていて、マイナンバー制度の紹介からローカルのセミナー情報、知事談話まで・・・2015年4月からは中国語とフィリピン語が新たに加わり、ポルトガル語、スペイン語、英語と日本語の6言語で展開しています。

 

多言語ものって、翻訳情報はPDFでアップしてあって、そこにたどり着くまでは日本語のページをかいくぐっていかなければならなかったり、サイトも静的で「また訪れたい」という気持ちになりづらいもの少なくないのですが、この三重県のサイトは各言語への入り口もわかりやすく、動画もふんだんに配置されていて、各言語の字幕もついているし、情報の更新頻度も(私が確認した限りでは)ある程度頻回な様子。

またチェックしよう、もっと役立つ情報はあるかな?と思わせてくれる作りになっています。さすが、外国にルーツを持つ方々との共生に力を入れている自治体だけあるな、という印象です。

 

<生活全般情報が書かれている多言語アプリも登場!>

三重県のサイトは(当然ながら)ローカルなものも多く含まれていましたが、日本での生活関係全般であれば、自治体国際化協会(CLAIR)さんが、なんとアプリまで作成し、税金から子育て、医療、年金まで網羅された情報を公開しています。

対応言語は英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語タガログ語ベトナム語インドネシア語タイ語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、日本語、やさしいにほんごの14言語!

多言語生活情報

多言語生活情報

  • CLAIR(Council of Local Authorities for International Relations)
  • ライフスタイル
  • 無料

 (Android版はこちら)多言語生活情報 - Google Play の Android アプリ

 

 <おまけ>

外国にルーツを持つ子ども・保護者の教育、学習関係については以前、私がNEVERでまとめたものもどうぞご参照ください。

matome.naver.jp

 

学校で日本語支援受けられていない外国にルーツを持つ子、7,000人

<7,000人の日本語を母語としない子ども、無支援状態>

去る12月1日、文部科学省にて外国人児童生徒の支援体制について議論する有識者会議が開かれました。

 

www.nikkei.com

 

現在、文科省の調査によると、日本の公立学校(小、中、高、特別支援)に在籍する「日本語指導が必要な外国人(外国籍)児童生徒」は29,198人います。そして今回の一連の報道では言及がありませんでしたが、日本国籍を持つ、日本語指導が必要な児童生徒がさらに7,897人在籍しており、全体で約37,000人の子どもたちが日本語がほとんどできず、学校の勉強がわからない状態で通学しています。

(出典:文科省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 26 年度)」の結果について」)

 

こうした子どもたちが公的に日本語教育支援を受けられるかどうかは、これまで自治体により大きな格差がありました。

 

そのことについては、ジャーナリストでNPO法人8bitnewsの代表である、堀潤さんの記事でも触れられています。

www.huffingtonpost.jp

 

先日、前述の文科省の調査を再確認すると、現在日本語指導を受けられている子どもは 外国籍日本国籍あわせて約30,000人で、つまり、7,000人もの子どもたちが、日本語の支援がまったくない状況で放置されていることになることがわかりました。

 

「日本語がわからず学校の勉強についてけない」という苦しい状況を打開するための機会すら提供されていない子どもが7,000人もいることに改めて驚きました。子どもたちが一言も周囲の言葉がわからない状況で、強い孤独に耐えながら学校に通っているのではないかと思うと、本当に胸が痛みます。

せめて学校外での支援が彼らに届いていることを祈るばかりです・・・。

 

<散在(さんざい)地域への対応が急務>

冒頭でご紹介した日経の記事にもあるように、対象児童生徒の少ない、いわゆる「外国人散在地域」で、どのように子どもの日本語教育を支えていくか、が課題です。

外国人散在(さんざい)地域については、以下の過去記事に詳しく書きましたが、日本語指導が必要な児童生徒が、地域に数名、ある学校に1人、2人しかいない、というような状況です。

 

ikitanaka.hatenablog.com

 

文科省の調査でも、日本語指導が必要な児童生徒のうち、実に43%以上が、その学校にこうした子どもが1人しかおらず、こうした外国人散在地域では自治体が独自予算を確保し、指導が可能な人材を手配する、ということが困難であり、積年の課題となっています。

 

<外国人の多い地域では、先進的な体制整備が進んでいます>

日本語を母語としない子どもたちの日本語教育を公的に支援することについては、納税者が納得しないから(外国人住民も納税者なのですが)、と消極的な自治体もある中で、比較的外国人居住者が多い地域では先駆的な取り組みも拡大してきています。

 

先日、関係者が驚いた(喜んだ)ニュースをひとつご紹介します。

www.kanaloco.jp

横浜市が、日本語を母語としない児童生徒向けのプレスクール(日本語の初期指導や日本の学校生活などについて学ぶプログラム)を開設することになり、そのために新しい建物を建設する、というものです。

1階には地域住民が利用できるコミュニティスペースがつくられ、その2階と3階にプレスクールが入ります。住民との交流もかねた、先駆的な取り組みです。

 

こうしてしっかり公的に日本語教育を自治体がサポートできるのは、外国にルーツを持つ住民の多い地域ならでは、の施策ですが、子どもの教育機会が済んでいる自治体によりこれほどまでに差が生まれてしまっている現状には本当に強い危機感を抱いています。

  

<散在地域の課題は広域連携とICTで一定の解決が可能>

 

エリアの広さにもよりますが、1つの自治体での単独支援が難しい場合は、拠点となる学校や施設を設置し、複数の市町村が共同で運営する広域対応を検討してはどうでしょうか。

公共の乗り物でアクセスしづらいエリアもあるかと思いますが、スクールバスを導入することでアクセスを確保し、子どもたちを各地から集めて集中的に日本語指導を行うことが効果・効率の面でも優れているのではないかと考えています。

私たちの現場にも、東京の西側全域、さらには隣接する埼玉県や神奈川県からも通所する生徒がいて、10を超える自治体から受け入れを行っています。

あるいは、テクノロジーを利用し、日本語教育をオンラインで受けられるようにするということも一考の価値があります。こちらは全国どこでもネット環境さえ整備されていれば受講が可能となりますし、コスト的にも最も安く運用できる可能性を秘めています。

 

広域対応も、ICTの活用も、いずれもメリット、デメリットがあると思いますが、何よりも肝心なことは、今日本語教育をまったく受けらていない子どもたちがいるという「0(ゼロ)」の状態を、一刻も早く「1(いち)」にすることです。

 

その一歩は、初期的には100%にはならないかもしれませんが、子どもたちが教育の権利を剥奪されているとも言える現状は、すぐにでも変えていかなくてはなりません。

 

Giving December―多様だからこそ、豊かな未来へ

こんにちは。田中です。

早いもので、もう12月。ついこの間まで「夏の終わり」くらいの気分でいたのですが、朝晩ぐっと冷え込むようになり、慌てて冬支度に入りました。

 

「あなたはどんな未来がほしいですか?」

さて、タイトルにあるように、昨日12月1日から「Giving December」というあらたな取り組みがスタートしました。

 

giving12.jp

 

この取り組みは、

『一年の終わりに未来のことを考え、実現してほしい未来へ寄付を贈ろう!』

というコンセプトのもとに実施されるもので、個人的には、新たな日本のソーシャルムーブメントとして、今後の盛り上がりに大きな期待を寄せています。

 

特に今年は、日本国内では政治的に大きなうねりが起こり、社会の中で右と左のベクトルが以前よりはっきりと輪郭を現しはじめ、さらに経済格差による上下方向の分断もより一層深化しながら表面化してきたように思います。

「戦争」と「貧困」という2文字が妙にリアルな実感を伴って社会全体に押し寄せてくるような感覚を覚えた一年となりました。

 

小さな「希望」をつないで、多様性が力となる未来へ

 

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一方で、私個人の身近な場所では、この仕事を始めてから最も大きな「希望」を手にした一年でもありました。それは、たくさんの方々から寄せられた【寄付と共感】が生み出した、あたたかく、力強い希望です。

 

ご存知の方もおられるかもしれませんが、今年度後半、私たちは初めてプロジェクト型のクラウドファンディングで、海外にルーツを持つ子どもたちに対する専門的日本語教育支援無償枠の創出に挑みました。

外国にルーツを持つ子どもに専門的日本語教育を無償で提供したい(田中宝紀) - READYFOR (レディーフォー)

 

未だ、その存在すら一般的にはあまり認知されていない子どもたちの、専門家による日本語教育というマイナーな課題にも関わらず、大きな関心・共感とたくさんのご寄付をお寄せいただき、18名分もの子どもたちの無償枠を創出することができました。また、このプロジェクトを通して、多文化共生社会の学びを考えるための自主グループが立ち上がるなど、予想を超えた広がりも生まれました。

 

このブログでもたびたびご紹介していますが、海外にルーツを持つ日本語を母語としない子どもたちにとって、適切な時期に、適切な言語教育を受けられるかどうかということが、彼らのその後の未来を大きく左右することになります。

 

その子どもたちが支援者の方々の想いに支えられて歩みだした未来は、彼らのような多様なルーツを持つ方々、多様なバックグラウンドを持つ方々が、社会の中で自分らしく生きる社会。そして、彼らを含む私たち1人1人の多様性こそが、社会の大きな資源の一つとなるような未来。

 

私たちの事業とは、そんな未来へのバトンを形にして、子どもたちへつないでゆくものなのだ、と、あらためて感じた一年でした。

 

2016年の海外にルーツを持つ子どもたちの教育に―Giving December!

現場にいて、年間100名以上の海外にルーツを持つ子どもや若者と出会うと、心から彼らの活躍する日本の未来に希望を感じます。そんな未来を目指して、これからも皆さんと共に、バトンをつないで行けたら、と思います。

 

現在、日本国内では海外にルーツを持つ子ども・若者に専門的な教育を行うことのできる機関は私の現場を含めてもあまり多くありませんが、東京の東側で活動する「NPO法人多文化共生センター東京」は、その数少ない専門支援機関の一つ。

主に、「学齢超過」と呼ばれる出身国で義務教育を修了してから来日し、国内で公立高校に進学を希望する15歳以上の若者を対象とした教育支援を行っています。

個人的には「東京の東=多文化共生センター東京/東京の西=YSCグローバル・スクール」と、勝手に『同志的感覚』を抱いて応援している団体です。

その多文化共生センター東京が、現在、私たちが挑戦したREADYFOR?にて、海外にルーツを持つ子どもたちのための教育支援の場存続のためのチャレンジを行っています。

readyfor.jp

すでに目標金額は達成していますが(祝!)、1人でも多くの子どもたちが未来へのバトンを手にすることができるよう、残りの期間で多くの方々の共感とご寄付が集まってくれたら、と願っています。

 

ちなみに、私たち青少年自立援助センターYSCグローバル・スクールでも、オンライン寄付受付窓口を開設しています!

外国にルーツを持つ子どもたちに、日本語を学ぶチャンスを。 | NPO活動を支援する | ファンドレイジングサイト JapanGiving(ジャパンギビング)

 

年末の大掃除で出た古本、中古CD・DVDが海外にルーツを持つ子どもの寄付に!

kishapon.com